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 2014.08.12
検察審査会が画期的議決
東電元会長ら「起訴相当」


検察庁に厳正な捜査と起訴を求める福島原発告訴団=13年5月31日
 東京第五検察審査会(11人)は7月31日、東電福島第一原発事故を巡り東京電力の勝俣恒久元会長ら3人を業務上過失傷害罪で起訴相当とする議決を行った。これは福島原発告訴団(武藤類子団長)の告訴・告発に対し、検察は昨年9月に42人全員を不起訴としたため、あらためて川俣会長ら東電役員6人の不起訴処分を不服として審査会に申し立てていたもの。画期的な議決を受けて、告訴団は「検察庁はこの議決が原発事故に対する国民の思いであることを理解し、直ちに強制捜査を含めた厳正なる捜査」の開始を求めた。
 審査会議決により起訴相当となったのは勝俣元会長の他、武藤栄元副社長と武黒一郎元副社長の3人。小森明夫元常務は対策の決定権がなく「不起訴不当」、安全管理の担当外の元副社長2人は「不起訴相当」となった。
 審査会議決は「大規模地震で炉心損傷等の重大事故が発生するのを未然に防ぐべき業務上の注意義務」を怠ったことを重視。その結果、「大量の放射性物質を排出させ、多数の住民を被ばくさせるとともに、現場作業員らに傷害を負わせ、周辺病院から避難した入院患者らを死亡させた」と命第一を判断の基準に置いた。関西電力大飯原発3、4号機の運転差止めを命じた5月の福井地裁判決に沿う議決だ。

 ただし、議決は事故の原因を「巨大な津波の発生」を前提としている。この点について事故後、国会、政府、東電、民間の4調査委員会が発足したが、国会事故調が電源喪失の直接的原因として地震の可能性を指摘した以外はみな津波原因説を唱えた。
 その後、原因究明を委ねられた原子力規制委員会はこの7月18日に津波原因説を発表し、これが公式の見解とされている。この点を割り引いても審査会議決は「根拠のある予測結果に対して常に謙虚に対応すべき」としており、出色の判断と言える。
 東電福島第一原発の津波想定は6・1メートル、3・11の実際の襲来は15・5メートル。その予見可能性について、政府の地震調査研究推進本部が、02年7月の時点でM8クラスの津波地震を予測し、原子力安全委員会と原子力安全・保安院も考慮・検討を促していた。東電では土木調査グループが08年3月に15・7メートルとなる結果を報告。しかし、勝俣元会長ら最高幹部は土木調査会の検討に委ねてしまった。
 東電と規制当局は自ら「安全神話」にどっぷりとつかり、「何をするにも原発の稼働ありき」で動いた。津波高15・7メートルは「単なる対処すべき数値としてとらえ、生命や財産に対する現実のリスクだという感覚が希薄」だった。「実際には発生しないだろう」という「曖昧模糊とした雰囲気が存在していた」。議決は、こうした東電、規制当局の態度は「一般常識からもはずれている」と断罪した。
 しかし、検察は勝俣元会長らには巨大津波襲来の予見可能性は困難であった、具体的な対策に3年以上の期間を要した、規制当局から対策の指摘がなかったとして東電、規制当局を弁護し、「名ばかり捜査」の批判を浴びた。審査会議決もこうした検察の態度を批判。勝俣会長らは巨大津波襲来の可能性を伝えられながら、「関心を持って対応」することがなく、部下に「安全確保を第一とする適切な指示・指導」を怠った。また、勝俣元会長は国会事故調で重要な点は知らなかったと陳述したが、審査会議決は「資料を見る限りそのまま信用することはできない」とつっぱねた。
 今後、検察は3カ月以内に再審査し、不起訴か起訴かを判断する。不起訴となった場合、検察審査会が再審査し、8人以上の起訴議決があれば、裁判所が選んだ指定弁護士が強制的に起訴し、裁判となる。
 今回の審査会議決は九州電力川内原発に始まる再稼働ラッシュに大きな楔となった。
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