安倍政権は貧困対策の基本方針である「子供の貧困対策大綱」を対策推進法施行後8カ月以上たってようやく閣議決定した。対策法は、「子供の将来が生まれ育った環境に左右されないよう環境整備や教育の機会均等を図る」ことが目的。いわば「貧困の連鎖」を断つことが狙いで、対策法は全会一致で成立したが、子どもの貧困率をいつまでにゼロにするという目標はない。しかも、生活保護基準引き下げとセットとあって、政治の貧困が際立つ対策大綱だ。
厚労省が7月に発表した最新(2012年)の「子どもの貧困率」は前回調査(09年)の15・7%が16・3%に悪化、大人も含めた「相対的貧困率」も0・1ポイント悪化の16・1%を記録した。全国民の平均年収の半分の所得を示す貧困線(ライン)は、112万円から122万円に10万円上がった。
離婚や死別によるひとり親世帯の貧困率は54・6%、2011年の時点で母子世帯123万7700世帯、父子世帯22万3300世帯。働いて得た収入(2010年)は母子世帯が平均181万円と父子世帯360万円の半分だ。その母子世帯の80・6%が就労ししているが、パート、アルバイトなど非正規が47・4%。2人に1人が非正規だ。このため、ひとり親世帯の児童扶養手当の受給者が11年度末に107万1466人に増えた。
貧困ライン以下の6人に1人の大半がワーキングプア(200万円以下)。食べ盛りの子どもに十分な食事を与えられず、クリスマスにおにぎり1個、夫のDV被害から逃れた母(28歳)と息子(3歳)が餓死するという痛ましいニュースが絶えない。貧困=飢餓は後進国の話ではない。
実は、日本は貧困率が先進35カ国中の9番目と貧困大国なのだ(ユニセフ、12年統計)。貧困の連鎖は生活保護世帯、中でも母子世帯に多い。その連鎖を断ち切ることが目的の貧困対策大綱は、子どもの貧困率、生活保護世帯の高校・大学進学率や就職率、ひとり親世帯の子どもの進学率や就職率、ひとり親世帯の親の就業率など25項目の指標を設定。支援策は教育、生活、保護者の就労、経済支援、その他の5分野。
たとえば教育について、低所得世帯の子どもを対象に幼児教育の段階的無償化、大学や専門学校への奨学金の無利子枠の拡大、国立・私立大学の授業料の減免、地域の学習支援などが並ぶ。また、肝心の保護者の就労支援といっても、ワーキングプアの温床である非正規労働は温存されたまま。
ましてや企業第一のアベノミクスの下、景気のいかんにかかわらず労働者の相対的・絶対的貧困化が進む。大綱は総じて当事者の要求と離れ、中身は乏しく小手先の貧困対策である。
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