安倍政権の生命維持装置は3本の矢によるアベノミクス効果だ。先の通常国会は「好循環実現国会」、今臨時国会は「地方再生国会」と位置付けられた。景気回復が停滞し、3本の矢を地方に届けようと目線を変えた。まち・ひと・しごとの創生へ、関連予算3・9兆円を概算要求、安倍首相は「ばらまき型の投資」を否定したが、統一地方選向けの政局予算に終わる公算が大。ましてや4月の消費税3%増税による景気の冷え込みを持ち直すだけの成長喚起力に欠ける。臨時国会は集団的自衛権など安保・外交色を抑えたものの、消費税再増税論が追い打ちをかけ、安倍政権失速を国民に印象付ける国会となりそうだ。
安倍首相の所信表明演説を受けた4日間の国会論戦は目玉の地方創生、女性の活躍、消費税、年金、賃上げ、労働者派遣・TPPなど生活・雇用・経済問題や原発、カジノのほか、安保・外交では集団的自衛権、国連改革、日中・日韓、拉致問題、関連してヘイトスピーチ、河野・村山談話など多岐にわたる。焦点はアベノミクスと安保・外交の2つ。安倍カラーが隠しようもなく露出している。
地方・女性も雇用、原発、TPPはもとより、武器製造企業を潤す安保・外交もすべての政策はアベノミクスに通じる。そのアキレス腱は消費税10%への増税だ。
安倍首相は再増税について、「冷静な経済分析を行った上で経済状況などを総合的に勘案しながら今年中に適切に判断する」と国会答弁。その時期は7〜9月のGDP確定値が出る12月8日以降。判断の前に引き上げの影響を点検する有識者会合を設置。7〜9月期のGDPが3%増税直後の4〜6月期より持ち直すことは当然だ。
安倍首相は10月2日の国会答弁で「引き上げにより景気が悪化し、税収が増加しない事態に陥ることは絶対に避けなければならない」と予防線を張った。「マイナス成長にならない限り粛々と実行」を求める財界サイドの意向を汲んだ見解だ。
消費税再増税社保費も削減 ノー、ノー
経済・財政政策の背骨を構想する経済財政諮問会議は、「経済と財政、社会保障の整合性の確保」を議論。しかし安倍首相は同会議で、「社会保障の支出を含めて聖域を設けない」と社会保障費削減を求めた。
その一方、首相は「引き上げは、国の信認を維持し、社会保障制度を次世代に引き渡すとともに子育て支援を充実させるものだ」(10月1日の国会答弁)と述べている。消費税増税は、財政の健全化による国債の信認維持と子育て支援のために行うというのだ。医療・介護など高齢者向けの社会保障費は削減すると宣言したに等しい。
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