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2015年1月20日 
14年度補正予算案の内実
地方創生の大ウソ


 政府は昨年12月27日、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と、総額3・5兆円からなる「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。後者は補正予算編成の指針とされ、そのうちの3兆1180億円が14年度補正予算の対象となり、1月9日の臨時閣議で決定された。双方とも地方に目配りした決定のように見えるが、内実は自治体の、国へのさらなる屈服強制だ。


 根拠なき地方創生策=「総合戦略」


 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、国と地方公共団体の双方で「5カ年戦略を策定・実行する」として、自治体に「地方版総合戦略」の策定を求める。
 その上で国は新たな「連携中枢都市圏」や定住自立圏の形成を進め、地方公共団体には地域間の広域連携を積極的に推進させるという。
 そして2020年までの5年間で、@地方に30万人分の若者向け雇用を創出し、A東京圏からの転出者を増やし、転入者を減らして転出入数を均衡させ、B結婚希望実績を80%に、出産希望実績を95%に向上、など4つの基本目標を設定。
 そのために、@では「地域産業の競争力強化」を図り、「対日直接投資残高」を18兆円から35兆円へ倍増させることなどによって11万人分、「サービス産業の労働生産性の伸び率」を0・8%から2・0%へと3倍に拡大すること等によって19万人分の「若い世代の安定した雇用」を創出する。Aでは「企業の地方拠点強化・地方採用拡大」により雇用数を4万人増やす。Bでは「若者の就業率を78%に向上」させ、かつ「正規雇用労働者等の割合を他の世代と同水準」とし、「働き方改革」により「第一子出産前後の女性の継続就業率を55%に向上」とする。
 また、「地方創生特区」を新たに指定する、ともしている。
 だが「アベノ成長戦略」のすべてがそうであるように、目標達成への確実な手法は何も示されておらず、単に安倍官邸の「願望」の羅列にすぎない。
 例えば海外からの投資呼び込み倍増がどのようにして可能となるのか。国内企業が避けてきた地方への投資を、なぜ海外企業ならやるだろうと言えるのか。何の説明もない。


 「総合戦略」と関係のない「緊急経済対策」


 一方、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」の内容を見ると、「総合戦略」の目指すところとはすでに相当かけはなれている。そこでは「地方においては経済の好循環の実現が十分には進展していない」とし、@地域の実情に配慮しつつ、消費を喚起A仕事づくりなど…地方の活性化B災害復旧等の緊急対応や復興を加速化、の3点に重点を置くとしている。
 だが、その手法は@で「地域商品券の発行や灯油購入費の補助などに活用する交付金制度の創設」や「住宅エコポイント制度の復活」等による策で1・2兆円。唯一「総合戦略」と関係のありそうなAの「地方の構造改革」には0・6兆円。B「災害復旧・復興対策」では1・7兆円、とする。
 つまり「総合戦略」との整合性は極めて希薄なものとなっているが、それもそのはず。正体は4月の統一自治体選挙を見据えたバラマキであり、しかも実際に閣議決定された補正予算案では防衛費が突出するなど、「地方への好循環拡大」とは無縁の色彩を強めている。歳出から経費1兆7880億円減額。


 「地方創生特区」で狙うさらなる規制緩和


 安倍官邸は新たに「地方創生特区」の選定作業に入っている。なかでも熱心なのは国家戦略特区諮問会議の、竹中平蔵氏や八田達夫氏ら5名の「有識者議員」だ。彼らは昨年12月19日に開催された同諮問会議に連名で意見書を提出した。
 竹中議員は常滑市や仙北市での農業・林業改革、愛知県での高校の公設民営などの意向を高く評価し、ほかにも鶴岡市や仙台市の名をあげ、「岩盤規制改革」へのさらなる追求を要望した。国への屈服を強いる上からの自治体構造改革の極みであろう。(野崎佳伸)


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