政府は1月14日の閣議で2015年度予算案を決定した。一般会計総額は96兆3420億円と14年度当初予算を4600億円(0・5%)上回り、史上最高を更新した。安倍首相は「経済再生と財政健全化を同時に達成するための予算案」とし、その仕上がりを自画自賛した。その内実はアベノミクス予算と言われるように、大企業に利益誘導し、防衛費(軍事費)を3年連続で増額するなど憲法を棚上げにする姿勢を見せつける予算案となった。
歳入は、新たな借金である国債発行を減らしつつも税収は54兆5250億円と9%増を見込む。財政健全化は景気回復からとみる政府。アベノミクス効果によりGDP成長率(実質)を14年度比1・5%プラス、名目で2・7%プラスを想定する。ただし、14年度の実質成長率は0・5%マイナスだ。
しかも、この税収にはマジックが仕込まれている。法人税は15年度税制改正に基づいて16年度までに実効税率を3・29%引き下げることになっている。15年度に2・51%引き下げても消費税税収が前年度比1兆7730億円増の17兆1120億円と法人税減税分をカバーする仕組み。また、復興特別法人税が1年前倒しで廃止の恩恵付きだ。
歳入のもう一つの柱である国債発行額は、36兆8630億円と前年度当初より10・6%減り、国債依存度は38・3%と4・7%下げた。国債発行総額は2年ぶりの減少とはいえ170兆円超。想定金利を実際の4?6倍の1・8%に設定し、国際暴落のリスクをヘッジした。リスクとは国の長期債務残高(借金)が15年度末に837兆円、地方と合わせると1035兆円。実にGDPの2・34倍とあのギリシャより悪い財政状態にある。それでも国債費を減らして国際公約の15年度のプライマリーバランス(PB)半減が達成できると胸を張る。
安倍首相が自負する財政健全化予算案は岩盤の規制緩和に踏み出した。それを裏付ける歳出の特徴は、防衛費と地方創生、原発関係費を聖域化しながら、歳出の3割を占める社会保障費の縮減に手を付けた。
社保費は全体で3・3%増額とはいえ、高齢化などで膨らむ経費には足りない。実質縮減の格好の理由が消費税10%への増税の先送りだ。年金はマクロ経済スライドが実施され、年金生活者支援給付金(低所得者へ5000円)と受給者資格の加入期間を25年から10年に短縮する見直しは先送りされた。
介護報酬は2・27%削減、65歳以上の介護保険料平均月5000円が5500円に引き上げとなる。
生活保護費は13年度から3年間に670億円の削減が決まっており、15年度は前年度当初比188億円減の2兆8635億円を計上。その中には住宅扶助費190億円、冬季加算30億円の削減が含まれる。 聖域化された予算の筆頭が防衛費だ。過去最高額だった小泉政権の02年度予算より244億円増えて4兆9801億円。安倍政権で増え続け、15年度は「積極的平和主義」を先取りして着々と攻撃型兵器の装備が進む。垂直離着陸輸送機MVオスプレイ5機(516億円)、ステルス戦闘機F356機(1032億円)、無人機グローバルホークシステム(154億円)、次期早期警戒機E2D1機(232億円)、対潜哨戒機P120機(3504億円)、水陸両用車AAV730両(203億円)などを購入。さらに強襲揚陸艦導入調査(500万円)、イージス艦1隻を建造する(1680億円)。
「積極的平和主義」を牽引する外務省予算が注目される。途上国に「法の支配」を輸出するODA予算は10・2%増、他に慰安婦問題など戦略的対外発信費、国連安保理常任理事国入り対策費を計上。安倍首相の外国訪問関連費は4億円。これらの憲法違反の無駄は社会保障費に回すべきだ。
また、地方再生関連予算は10府省にわたり、関連事業192、7225億円。14年度補正予算42000億円と自治体15年度予算「地財計画」85兆2700億円と3段構えで臨む。
なお、原発関連予算は1775億円。立地・再稼働自治体の優遇が際立つ。復興予算では福島再生加速化(避難者の帰還)交付金1056億円が目立つ。
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