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2015年02月10日 
人命第一のウソ
「戦争しない国」こそ


 昨年6月に国家樹立宣言をした恐怖の武装集団「イスラム国」は、1月20日に殺害予告していた邦人2人のうち民間軍事会社経営の湯川遥菜氏(42歳)を1月24日に、フリージャーナリストの後藤健二氏(47歳)を2月1日に殺害したと伝えた。貧困と差別に希望を失った移民者を聖戦(ジハード)に駆り立て、中東を殺戮の戦場にする「イスラム国」の銃口は1月7日にフランスで火を噴き、その10日後に日本に向けられた。誘い水となったのは安倍首相の中東歴訪時の不用意な発言だった。邦人殺害にオバマ米大統領は「イスラム国の壊滅」を宣言、追随する安倍首相は「戦争のできる国」へ憲法の分水嶺を一気に飛び越えようとしている。


 「殺害声明」で「邪悪な有志連合国の愚かな参加国」の「アベ」と名指しされた安倍首相は、「テロリストたちを決して許さない。その罪を償なわせるために国際社会と連携していく」と述べた。
 この発言には事件の引き金となった自らの失態への批判を封じ、今国会で焦点となる「積極的平和主義」の法整備へ導線を引く意図が込められている。
 安倍首相はこの1月17日からエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を訪問し、エジプトで「イスラム国」対策として2億ドル(235億円)の援助を表明。次いでイスラエルのネタニヤフ首相とともに「テロとの戦いに取り組む」と宣言した。米国主導の有志連合60カ国・地域の一員として空爆を支える「人道支援」=資金援助を行うオペレーション(任務遂行)の表明だ。
 湯川、後藤両氏の殺害予告はその3日後に襲った。人命第一を繰り返した安倍政権。その救出対応は「ヨルダン頼り」だった。仮に「トルコ頼り」で救出に成功しても、自衛隊の海外派兵による邦人救出が本旨の「積極的平和主義」の具体的実行性を企む安倍首相には不満足だった。

 1月29日の衆院予算委員会。安倍首相はアルジェリアでの邦人殺害事件を例に引き、「(英国などとは違い)日本はお願いだけだ。それで責任を果たせるか」と問いかけ、昨年7月の閣議決定に基づいて「自衛隊の持てる能力を生かし、救出できるようにする」と述べている。
 海外の在留邦人は126万人。その邦人の安全を期す最大の担保は、憲法に則り「戦争をしない国」に徹すること。このことが今回の事件の最大の教訓だ。
 04年にイラクで拘束された高遠菜穂子さんは、イラクにおける殺戮は米国→マリキ政権→「イスラム国」に引き継がれ、「対テロモンスターはもっと大きなモンスターを生む」と警告している。


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