東電福島原発事故は「わが国史上最大の公害事件(犯罪)だ」―。事故5年目の春を迎えてなお12万人が避難し、子どもの甲状腺がんが検査2巡目で117人に増え、廃炉作業中の現場では放射性物質による高濃度汚染水が海に垂れ流し状態にあるのに国も東電も、誰も責任をとらないのは許せない!こうした被害者の怒りと叫びを体現する福島原発告訴団(武藤類子団長)は東電の勝俣恒久元会長、武藤栄・武黒一郎元副社長の業務上過失容疑で再度告訴・告発した。現在、東京第五検察審査会に強制起訴を求めて闘っている。
3月24日、東京検察審査会前。福島の避難者ら約200人が、東電元幹部に対する再度の起訴を要請した。
郡山から来たHさん(女性)は、検察審査会に希望を与えてくださいと訴えた。「4年を経てなんだろうこの国はという思いが募っています。汚染水の問題を1年以上も隠して、福島県民をバカにしています。子どもたちのためにも事故の責任を問い続けていきます」。
田村市から来たYさん(男性)は、めちゃくちゃにされた住居と生活を戻してほしいと声を張り上げた。「突然、平凡な生活が避難生活に変わりました。仮設住宅は洗濯のこと、テレビのボリュームなど気を使います。そんな中、あれほど元気だった人が突然亡くなり、母は帰りたいと泣き、悔しくてたまりません。地域では農業団体も区長会もみんな帰還には反対しています。それを政府は無視して進めています。不平不満とストレスが溜まり、第2次訴訟がまとまろうとしています。起訴は当然です」。
東電元幹部や当時の政府関係者の罪を問う第一次の告訴・告発は12年に始まった。検察庁は「不起訴」処分としたが、14年7月に検察審査会が「起訴相当」と議決、しかし東京地検は今年1月に再度「不起訴」処分、このため今回は検察審査会の再度の判断となる。審査会11人中8人が「起訴相当」と判断すれば刑事裁判が始まる。
再度の審査請求に当たり、告訴団は3通の上申書を提出した。「その2」では、事故前の東電土木グループが明治三陸型地震で最大15・7bの津波の恐れを武藤副社長に報告→武藤副社長らは費用を理由に対策を中止→土木学会に再調査を依頼した経緯と、この間1年を費やしさらに回答期限を3年後の12年3月に先送りしたことを指摘。上申書は、もし08年の時点で直ちに対策をとり、調査期限を1年以内にして対策をとっておれば事故を防げたとしている。
原発再稼働をアベノミクスの一環と位置付ける安倍政権。将来のエネルギー構成の原発比率を20%以上とする経産省・財界。「原発事故はなかった」とする原子力ムラの犯罪行為に、告訴団は「不起訴が確定してしまうと、この事件の真相は永久に解明されないことになる」と警告する。
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