安倍首相の訪米成果は戦争参加法案の国会提出、沖縄・辺野古への新基地建設強行、垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの横田基地配備となって現われた。沖縄県民が2013年に安倍首相に提出した建白書に明記した「オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念」を実現する闘いは、「オール沖縄」から「オールジャパン」に広がりつつある。3万5000人を結集した5・17沖縄県民大会に続き、本土でも5月24日に1万5000人が参加して「国会包囲ヒューマンチェーン」が取り組まれた。
日米首脳会談は沖縄が米国の統治下に置かれた4月28日に設定された。沖縄県民にとっては「屈辱の日」の当日、安倍首相はオバマ大統領に「辺野古移設を唯一の解決策とする立場は揺るぎない。沖縄の理解を得るためにも負担軽減は優先課題だ」と伝えた。翁長県知事はこの発言に憤り、首相の言う「日本を取り戻す」には沖縄は入っているのか、沖縄に関しては「戦後レジームを死守している」と批判した。
翁長知事を先頭とする沖縄県民の大同団結は、住民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦、戦後27年間の米軍占領統治下の苦しみの体験を通して形成された。「沖縄のことは沖縄で決める」。翁長知事は住民の意思を汲み、「沖縄の人をないがしろにしてはいけない」と安倍首相を牽制した。
翁長知事の県民大会あいさつは、菅官房長官と安倍首相との会談でも伝えられた政府の立場(「普天間基地の辺野古移設が唯一の解決策」)を否定、「新辺野古基地建設を阻止することが唯一の解決策」との立場を対置した。
菅長官は「世界で一番危険といわれる普天間の危険除去こそが問題の原点であり、その固定化は絶対に避けなければならないということが国と沖縄の共通の認識」と主張する。
しかし、翁長知事は「沖縄から言わせるとさらなる原点は普天間基地が戦後米軍に強制接収されたことにあります」と反論。そして、「沖縄は自ら基地を提供したことは一度もございません…土地を奪っておきながら『普天間飛行場が老朽化したから』『世界一危険だから』『辺野古が唯一の解決策だ』『沖縄が負担しろ、嫌なら沖縄が代替案を出せ』と言っておりますが、こんなことが許されるのでしょうか。私はこのことを日本の政治の堕落だと言っているわけであります」と諭すように述べた。
積極的平和主義の下で沖縄を戦争政策の中に固定化し、基地負担の軽減といっても新基地建設の負担により0・7%しか減らない。その新基地にオスプレイを100機配備する計画を暖め、県民・国民を欺き続ける政治は誰が見ても「堕落」以外の何物でもない。
菅長官の言う「問題の原点」には歴史認識が抜けている。せいぜいで1995年の普天間基地の全面返還合意、99年の県知事と名護市長の合意、13年の知事の辺野古埋め立て承認と浅い。沖縄戦の犠牲、「沖縄の自治は神話です」(復帰前のキャラウェイ高等弁務官)とされた米軍統治、復帰後も続く過重な基地負担。この歴史を生活を通して体に刻んだ「オール沖縄」に刃向うのは歴史の冒涜だ。翁長知事は大会あいさつの最後に、「どうか日本の国が独立は神話だと言われないように安倍首相頑張ってください」と皮肉った。
翁長知事は県民大会を土産に27日から訪米の途に就いた。沖縄の闘いは、国会審議が始まった戦争参加法廃案の闘いそのものだ。
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