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2015.06.30 
戦争法 廃案に
会期95日間の延長


 政府は6月22日に通常国会を9月27日まで95日間延長することを自公などの賛成多数で決めた。これは安倍首相が「夏までに成就する」と米国に誓約した戦争参加法案の審議が遅れ、予定の80時間の半分程度しか消化できず会期末の24日の衆院通過が不可能となったため。その転機となったのは3憲法学者の衆院憲法審査会における「違憲」発言。これで法案の合憲性が総崩れとなり、国民の政権不信を募らせ、廃案世論に火が付いた。新社会党は総がかり行動の一翼として15日から連日国会前で座込みを行った。


 集団的自衛権の行使へ憲法と政府見解の封印を解いた戦争参加法案。国会論議では付随して徴兵制や軍法会議(審判所)につながる「自衛隊員への罰則」まで飛び出した。安倍首相らはこうした疑念を糊塗し、先送りする姑息な答弁に終始し、国民に「説明不足」という不信を募らせた。
 憲法研究者の95%が法案は違憲であり撤回すべきと考えているといわれる中、271人が廃案を求める声明を発表した。作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(93歳)が6月18日、国会前へ車いすで駆けつけ、「このまま安倍さんの思想で政治が続いていったらやはり戦争になると思う。…おじいさんの後ばっかり追わないでもっと日本国民の身になって考えてほしい」と訴えた。
 戦争法案に反対する女たちの「レッドカード」行動が20日にあり1万5000人が国会を包囲、労働者中心の戦争への道を許さない集会が23日に都内で開催されて2500人が参加、会期末の24日にはあくまで廃案を求める総がかりの国会前行動が繰り広げられた。
 全国の自治体でも法案撤回を求める意見書が相次いで採択され、千葉県野田市の根本崇市長は、「政治家として(法案は)憲法に違反…私は9条改正に反対」と発言した。
 法案の合憲性を巡るそもそも論に押し戻された政府が、再反論の根拠にしたのが72年の政府見解と57年の最高裁の砂川判決だった。安倍政権は72年の旧3要件に「他国への攻撃であっても、自国の存立が脅かされる事態」を持ち込んで新3要件に変えたが、72年政府見解は「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論付けており、論理の断絶は明らかだった。
 砂川判決については3憲法学者の長谷部恭男早稲田大学教授と小林節慶応大学名誉教授が15日の記者会見で政府の主張を徹底批判した。その中で長谷部教授は、「砂川事件で問題とされたのは日米安保条約の合憲性。集団的自衛権を行使しうるかどうかは全く争点になっていない」と述べ、「今の内閣のもとで内閣法制局がプレッシャーに負けて解釈を変えた、そこに問題がある。法案が成立しなければ日米関係が悪化するかも知れないが、もともと無理な約束をしたことが原因だ」と問題の理非を説いた。
 教授の警告は実際となった。19日の衆院特別委員会で、横畠裕介内閣法制局長官は集団的自衛権をフグにたとえて「肝を外せば食べられる」と答弁。権力の捕囚となった者の知性の堕落を暴露した。
 国会前の座込みで社民党の照屋寛徳衆院議員(沖縄2区)は、「安倍首相の欺瞞にだまされるな」と声を張り上げた。首相は民主党の岡田代表の「ホルムズ海峡でどのような安全保障環境の根本に変容があったのか」との問いに、「政策的な中身をさらすことになる。全て述べる外国のリーダーはほとんどいない」と応じた。
 安倍首相ははぐらかしと欺瞞、専制的な思考で国民を威圧し、戦争のできる国を実現しようとしている。
 廃案を目指す闘いは長丁場となる。


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