政府・与党は7月3日の衆院特別委員会の集中審議をへて、戦争参加法案の審議が所定の80時間を超えたとして、15日の委員会採決、16日の衆院本会議採決へアクセルを踏んだ。安倍首相は3日の委員会で、自民党若手勉強会の言論封殺発言に触れて「最終的に私に責任がある」と幕引きを図った。維新の党は昨年7月閣議決定の集団的自衛権行使に反対する立場の対案を自公民3党に提示した。法案採決へ環境整備を進めたいところだが、法案の論点は出尽くしておらず、生煮え。何よりも世論の58・7%が法案に「反対」、今国会での成立に63・1%が「反対」(共同通信の世論調査)している中での採決。内閣支持率は大幅に下がり、ギリシャ危機で頼みの株価は頭打ちと政権に陰りがきざした。ここは世論を味方に野党が足並みを揃えて採決に「反対」し、会期末の法案成立阻止・廃案へ追い込む以外にない。大衆運動も最大の山場を迎える。
法案の採決を急ぐ安倍政権に、3つの障害を封じ込めようとする悪あがきが目立つ。
一つは国民世論の封じ込め。7月1日の委員会での参考人質疑で、法案に批判的な3氏(伊勢崎賢治・東京外大大学院教授、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、柳沢協二・元内閣官房副長官補)に法案賛成派の2氏(小川和久・静岡県立大学特任教授、折木良一・元統合幕僚長)を加えて世論を中和した。
いま一つは、自民党の安倍応援団の本音発言の切り離し。安倍首相は3日の委員会で「報道の自由、言論の自由を軽視するような発言、沖縄県民の思いに寄り添って負担軽減、沖縄振興に力を尽くしてきた今までの我が党の努力を無にするがごとき発言が行われた。大変遺憾であり、非常識な発言であり、国民の信頼を大きく損ねる発言であり、看過することはできない」と問題の本質をはぐらかした。
第二の障害は、沖縄の県民世論。首相の言う「我が党の努力」そのものが沖縄県民を敵に回す努力であったが、応援団発言は火に油を注ぎ、県議会は2日に発言撤回と謝罪を求める抗議の決議を採択した。防衛省は新基地建設反対の現地の闘いが続く中、辺野古沖の海底ボーリング調査を9月末まで延期せざるを得なくなった。
第三の障害は、多弱とはいえ法案に反対が多数派の国民世論の応援を背にする野党勢力だ。政権にとって懐柔工作のターゲットは維新の党に絞り込まれていた。同党は大阪組との主導権争いが絡み、早くから修正協議を拒否し、結局は対案提出に落ち着いた。
対案は集団的自衛権の行使を前提とする「存立危機事態」を認めず、政権側に妥協の余地はない。残された道は維新の党に花を持たせて採決に引き出し、賛成多数で衆院を強行突破することだ。しかし、会期末まで60日を切るところへ議論を尽くせば衆議院で再議決はできなくなる。そうなると、8月までに法案を成就させるとする米国への誓約破りが問われ、安倍政権は総辞職に追い込まれる。剣ヶ峰に立たされた安倍政権を打倒する恃みの力は世論だ。
|