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第2次告訴でも力の限りたたかいましょうと訴える武藤類子福島原発告訴団団長=8月19日、東京第一検察審査会前 |
人災そのものである東電福島第一原発事故からもうすぐ4年半、先に東電元幹部3人の強制起訴を勝ち取った福島原発告訴団(武藤類子代表)は8月19日、東電と原子力安全保安院(当時)の刑事責任を問う第2次告訴を審査する東京第一審査会を激励し、参議院議員会館で第五検察審査会議決の意義と今後の展望について打ち合わせた。武藤団長は、「事故の責任が問われないままでは、私たちは新しい一歩を踏み出せません。しかも事故の被害者はどんどん切り捨てられようとしています。これから始まる裁判を監視・支援し、日本中に知らせていきましょう」と静かに、決意を込めて挨拶した。
原発事故被害者のFさん(女性)は、「私たち避難者に、帰れるか帰れないかを問う住民意向調査が何回もきました。半数以上の人が戻れないと答えているのに、声が届かず諦めかけていました。そこへ強制起訴の話がきて、号泣しました」とそのときの感動を伝えた。
金沢に自主避難しているTさん(男性)も議決と聞いて涙が出た。「市民の正義を見せてくれた。でも、こんなこと当たり前のこと。無責任体制の日本こそおかしい」と検察審査会議決が開いた本質問題に触れた。もし、不起訴になっていたら―。河合弘之弁護士は「3人は無罪放免となり、真相究明の手段がなくなる。審査会議決はそれを防ぎ、首の皮1枚でつながった」と解説。また、起訴議決の政治的意義について、「勝俣元会長らが公判に出廷し、注目を浴びる。株主代表訴訟に持っていけるし原発運転差し止め訴訟にも影響する、再稼働が既定路線ではなくなる」と展望を示した。
今回の検察審査会議決は、被害者として44名を認定。実際には1000名以上の関連死亡者、100名以上の甲状腺がん発症者、当初15万人以上に上った避難者がいる。当然、事故の責任は国と東電に帰すべきところ、検察は「不起訴」にし、「犯罪」を闇に葬り去ろうとした。
事件の真相を追及してきた海渡雄一弁護士は、「議決の根拠となった東電と国による津波対策の怠慢に関する情報の多くは、2011年の夏には検察庁と政府事故調の手にあったはず。しかしこれらの情報は徹底的に隠された。この隠蔽を打ち破ったのが強制起訴の議決。市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任の隠蔽を打ち破った」と総括した。 第2次告訴の相手は東電5名、原子力安全保安院3名。この8名は「東電の役員の背後に隠れているものと再稼働に闇躍している役所の担当者。いずれも、国が滅びようとも原発を推進するいわば原発原理主義者だ」(河合弁護士)。
2回に及ぶ検察審査会の起訴議決を裏付けたのは東電と保安院の「歪んだ共犯関係」を暴露する資料だった。福島原発事故の原因とされる津波の評価・対策で、隠蔽・先送りを先導したのは東電と保安院の実務担当者だ。海渡弁護士によると、両者の共犯関係は東電優位、保安院は東電の「虜」となっていた。
しかも、保安院の審議官は政府事故調に明らかな虚偽を述べ、東電で事実に正直に向き合おうとする耐震審査室長は、「クビになるよ」と脅されている。東電が津波評価の検討を委ねた土木学会の「津波評価部会」では第2次の被告訴人が部会の幹事を務め、土木学会は電力事業者は統制下にあった。
今後の展望
東京第五検察審査会の「強制起訴」議決は、原子力ムラの社会的不正・犯罪体質にメスを入れた。今後は弁護士会(東京第二)の推薦を受け、裁判所が任命した検察役の弁護士が強制起訴を行い、裁判が始まる。保田行雄弁護士は「これからが大変だ。10年戦争ともいえる大裁判となる」と次のように展望を語った。
相手は、多くの原発裁判で公正で、原発の危険性を指摘してきたとはいえない裁判所だ。油断はできない。どう勝たせにいくか。まず、検察庁に選任された指定弁護士に協力すべきだと申し入れる。指定弁護士が起訴するが、捜査は検察官に嘱託し、補充捜査を要請する。
裁判は来年から始まるだろう。被害者(44人)のどなたかの委任を受けて公判に参加し、意見を述べるようにしたい。公判は公開、その内容を国民、市民に知らせる必要があり、原告団は監視グループをつくる。裁判の外から専門家を入れて助言する態勢をつくる。
裁判が国民注視の下で行われていることを、裁判官に分かってもらう。
公判で有罪を勝ち取ることは大変だが、第2の奇跡を起こそう。
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