新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 今週の新社会
  4. 2015.10.20
2015.10.20 
「聖域」は守れず
亡国のTPP合意


 第3次安倍改造内閣発足を目前にした10月5日、安倍政権は12カ国が参加するTPP (環太平洋経済連携協定)交渉に合意した。交渉を主導したオバマ米大統領は「世界経済のルールを中国のような国に書かせるわけにはいかない」とリバランス政策の成果を誇示、世界第3位の経済大国日本は「政権発足以来の大きな課題に結果」と手放しで自賛。だが、秘密交渉の中身が明らかになるにつれて米日多国籍企業本位の、民衆無視の合意に批判が沸騰し始めた。
 12カ国のGDPは3000兆円、世界の36%を占め、うち米国62%、日本17%。米国ガリバー体制の下、日本は域内「成長エンジン」の取り込みに米国の番頭として合意形成に前のめりだった。
 TPP交渉参加は民主党政権でレールが敷かれ、第2次安倍政権が正式参加を表明。アベノミクス3の矢(成長戦略)の「発射台」として位置付けられた。交渉参加に当たり自民党は、農林水産分野の重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)や国民皆保険制度の聖域(死活的利益)が「確保できないと判断した場合は脱退も辞さない」と決議した。
 では今回の合意で聖域は守られたか、否。全9018品目の関税撤廃率95%、重要5項目586品目。例えば焦点のコメは、ミニマムアクセス米(最低輸入量)をGATTウルグアイ・ラウンドに基づく77万トンから段階的に増やし、協定発効から13年目以降は米国7万トン、豪州8400トン増とすることが義務付けられた。
 合意3日後、農水産物834品目中440品目の関税撤廃が公表された。ブドウ、オレンジ、サンマ、アジ、鶏肉など毎日の食卓に欠かせない食品が自由化されると日本の農水産業は壊滅的な打撃を被る。農水省は新たな「食料・農業・農村基本計画」で、2025年の食料自給率45%(現在39%)、農業所得3・5兆円(現在2・9兆円)などの目標を掲げる。しかし、TPPの門戸開放により目標達成は絶望的だ。
 一方、消費者は家計負担の減少を見込み歓迎ムード。内閣支持率は回復させたが、安倍政権は自動車を中心に多分野の企業の途上国進出を促し、GDP2%成長が狙い。結果、伝統的農水産業は衰退し、産業の多国籍化・空洞化が進むだろう。
 安倍首相はTPP交渉参加を表明した13年3月の記者会見で「(TPPは)我が国の安全保障にとっても、またアジア太平洋地域の安定のためにも大きく寄与する」と述べた。
 戦争参加とTPPは一体。撤回しかない。


 ↑上にもどる
一覧へ
TOPへ