安倍政権は憲法で定められた臨時国会召集をネグレクトし、政権にとってマイナス要因となる諸問題を来年1月開会の通常国会に先送りすることを決めた。憲法と国会、ひいては民意を歯牙にもかけないアベ傲慢政治は戦争法の強行可決後も何ら軌道修正されることなく、むしろ増幅されている。「国民はモチを食べれば(正月を越せば)忘れる」と高をくくっているようだが、安倍政権と民衆の感覚のズレは修復不可能なまでに大きい。国民に急いで説明責任を果たさなければならない課題は山積している。自民1強・安倍1強体制におごり高ぶる安倍政権は、今すぐ退陣してもらうほかない。
臨時国会 すっぽかす
衆参いずれかの議員の4分の1以上の賛成があれば内閣は臨時国会を召集しなければならないとする憲法53条に基づき、野党5党などが召集要求を10月21日に衆参議長に提出した(衆院125人、参院84人)。
だが、安倍政権は拒否、2日間の衆参予算委員会の閉会中審査で済ませようとしている。首相の外交日程が表向きの理由だが、改憲志向内閣の憲法無視は極端な国会軽視にエスカレートした。
要求書は安保法制とTPPの国民への説明責任、改造内閣閣僚の所信を質すことを求めている。安保法制制定後の説明抜きに戦争準備が進められ、首相は横須賀港の米空母を観艦した。国民生活に不安の影を落とすTPP合意の説明も来年に先送りされる。
国民の前で検証を要する問題は閣僚の「政治とカネ」と醜聞、沖縄県知事の辺野古埋め立て承認取消しに対する政府の対応など1カ月の審議でも不足。国家公務員給与法の改正は急を要する。首相は所信表明を行え!
TPP 公約破りは棚上げ
3年間の秘密交渉の末に大筋合意したアジア太平洋地域12カ国の経済連携協定TPPの全容が、10月20日に漸く公表された。
農産物と工業製品全9018品目の関税撤廃率は95%、8575品目。農産物全2328品目の約8割1885品目が最終的に撤廃。重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)586品目の174品目(約3割)を撤廃、関税保護されていた農産物834品目の395品目が撤廃(約5割)。工業製品約6600品目の86・9%は即時撤廃、最終的に100%撤廃となる。
続いて10月22日、域内経済活動31分野のルールが公表された。12カ国8億人、GDPは世界の約4割。甘利担当相はWTOにもないビジネスルールが成就され、「世界の経済ルールになり得る」と高揚感を隠さない。安倍首相は「関税撤廃の例外はしっかり確保した」とうそぶいた。
TPP合意のキーワードは「追い風」。域内の門戸開放により、新興国などへの輸出・投資の拡大を見込む。どこまでも多国籍企業中心のTPP。逆に輸入増で危機に瀕する農林水産業は競争力の有無で淘汰される。参院選を控え、総合対策が税金で手当てされる。
沖縄 黒い癒着どろり
翁長沖縄県知事の辺野古沿岸埋め立て取り消しを巡り、県と国が全面対決に入った。その矢先に工事に係る環境を監視する国の監視委員会と護岸建設や環境調査をする業者の黒い癒着が暴かれた。
13人で構成する監視委の委員3人に業者が計1100万円を寄付。しかも監視委の運営、委員の推薦、助言内容まで業者に丸投げ。これでは業者、その背後に控える国の言いなりだ。監視委は工事強行にお墨付きを与える飾りに過ぎなかった。
学商の世界では、海底調査のための大型ブロック投入によるサンゴの損傷は小規模だから構わないと言って大規模な湾埋め立てを認める不条理がまかり通る。たった研究費200万円のために、沖縄がどうなってもいいという精神の卑小さ。
問題の業者には防衛省OBが天下りしている。胴元は防衛省。この構図は原発でなじみのムラ組織だ。こんな監視委は即解散し、国の責任こそ徹底追及されるべきだ。
右傾 すべては改憲へ
安倍政権が再登場して不自由さを拡大再生産するうろんな事件が頻発している。放送大学で美術史の試験問題の記述「日本が再び戦争をするための態勢を整えつつある」が「不適切」としてサイトから削除された。 北海道高教組が組合員に配った「アベ政治を許さない」のクリアファイルに、道教委が問題にして調査。JR駅のトイレの落書き「(安倍首相は)戦争好き」に警視庁が捜査…どの事件も背景に国家への怖れがある。
その一方で、アベ政治翼賛は増長。加藤信勝1億活躍担当相ら3閣僚が靖国神社参拝。近くは11月3日を明治天皇誕生の「明治の日」にするために祝日法を改正する運動が新聞に大きく取り上げられた。11月3日は文化の日、日本国憲法公布の日。この運動は自民党改憲草案に沿う憲法改定運動の一環だ。
同草案は立憲主義を否定し、国家・天皇主権をうたう明治憲法の改訂版。アベ政治は自民草案に通じている。
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