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2015.11.17 
東京・大田区 民泊条例制定へ
国家戦略特区の規制緩和


 東京都大田区は10月14日、国家戦略特区を活用してマンションの空き室などを民泊施設として営業できるようにする「民泊条例」を11月26日開会の区議会で提案し、来年1月にも事業開始する計画を発表した。同日、内閣府戦略特区会議は大田区の計画を了承し、併せて外国人起業家受入れへ入管審査基準緩和も了承した。10月27日可決の大阪府に次いで2例目となる大田区民泊条例。安倍首相も昨年自ら「民泊活用」に言及、5年後の東京五輪、対TPP環境整備へ一斉に実施される規制緩和の重要な柱だ。こうした民泊条例を徹底検証するシンポジウムが
那須りえ・大田区議の呼びかけで11月5日、大田区内で開かれ、宇都宮健児弁護士らが多面的に検証した。


 那須議員が「民泊条例のもとは国家戦略特区です」と解説した。国家戦略特区はアベノミクス成長戦略の柱であるとともにTPPの受け皿でもある。
 特区は産業の国際競争力を強化し、国際的な経済活動を展開する拠点。法や税制、農業・医療・労働など諸分野の岩盤規制をフリーにする突破口と位置付けられ、目指すのは「世界で一番ビジネスがしやすい国」(2013年3月の安倍施政方針演説)だ。
 特区は国が主導し、企業・自治体・国が一体で取り組むところがミソ。
 民泊条例は国家的事業なのだ。1年後には全国展開することが予定され、東京都も東京五輪を契機に「世界中から資金・人材・企業を東京に集め、開かれたビジネス都市に改造する」(舛添都知事)ことを狙う。「民泊」の正式名称は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」。民泊条例は一部屋の床面積や定員、フロント、風呂・暖房・調理場などの設備を規制する旅館業法の適用除外とするいわば国が認定する脱法条例。そのため、同法に基づくホテル、旅館、簡易宿泊所、下宿に配慮。7泊以上の宿泊、区の立ち入り質問、近隣住民への説明を義務付けるが、実効性は乏しく、違反への罰則条項もない。
 那須区議は気になる動きとして次の問題を指摘する。外交官に限られている家事援助に外国人労働者の受け入れが解禁されること。すでに同事業参入にダスキンやパソナグループが大型の「民泊宿舎」を用意している。
 人権番外の外国人技能実習生の受け入れも拡大する。また、東京五輪のインフラ整備も含め、家事・介護・建設など多分野の低賃金労働力の確保を当て込んだ現代版「飯場」となる恐れがある。
 しかも、東京五輪需要は2020年までの一過性。民泊条例は通年の外国人観光客やビジネス需要に応える低コスト・高利回りの民泊ビジネスに加えて、生活保護や野宿者など国内の住宅難民の避難所となり、脱法ハウスなど貧困ビジネスに門戸を開放しかねない。
 長年「脱貧困」に取り組んできた宇都宮さんは石原都政後の13年間、都営住宅の建設は中止、ネットカフェ、レンタルオフィス、敷金・礼金なしで鍵を貸すゼロゼロ物件などが繁茂する深刻な住宅事情に触れた。医師の越智祥太さんは大田区蒲田・大森で櫛の歯が抜けるように高齢者が亡くなっている野宿者の実態を紹介した。
 ではどうするか。TPPによるグローバルな規制緩和に猛進する日本を警告するアジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子さんは、「TPPが暮らしにどう影響するか感度を高め、働く人がもっと怒ろう」と提起した。
 住民の不安や危惧を無視し、貧困ビジネスや低賃金労働者の利用など、企業の規制緩和への要望を国が受け入れて自治体に押し付ける特区方式。民泊条例だけでなく、住民の安全が脅かされている。


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