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  4. 2017.1.24
 
日韓の「慰安婦」問題
対抗措置で混迷


  侵略の歴史と向き合え


 日本政府は年明けの6日、韓国・釜山の日本総領事館前に「慰安婦」問題を象徴する「少女像」が設置されたことへの対抗措置として、駐韓国大使と釜山総領事の「一時帰国」を発表した。一昨年末の「日韓合意」の履行を巡る問題に起因する措置だが、「合意」自体が問題解決にならないことを露呈し、日本政府の対応は両国関係をこじらせるだけだ。 「日韓合意」の問題点は、そもそも韓国政府が慰安婦問題に対する民衆の気持と乖離し、日本は10億円の拠出金で歴史問題を清算しようとしたことだ。日本が拠出した10億円は「名誉と尊厳回復、心の癒し、医療サービスの提供」などとし、賠償金ではない。
 さらに「合意」をもって韓国は今後一切旧日本軍「慰安婦」問題を「蒸し返さない」とし、「少女像」の撤去を約束した。韓国の民衆は両政府の欺瞞的対応を批判し、「自国を10億で売り飛ばした」と、「合意は無効」とする世論が高まり、韓国政府を揺さぶっている。

 慰安婦問題を巡っては、1993年に「河野官房長官談話」で軍の関与と国の責任を認めお詫びと反省を表した。その後、アジア・太平洋戦争に対する日本の態度は村山富市、小泉純一郎の両首相談話で「過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼」とした。 
 また、政府は1995年に設立した「アジア女性基金」で「償い金」を3カ国285名の元「慰安婦」に支払った。その際、「私の気持ち」として首相が手紙を添えた。だが、支払ったお金は民間財団を通じた「償い金」であり、国家責任の問題は残したままだ。
 一方、安倍晋三首相が15年8月に出した「戦後70年談話」は、日本が起こした戦争の要因を「世界恐慌」と「経済のブロック化」に求め、責任を回避する文言を入れ、村山・小泉談話とは全く異質のものとなった。
 さらに「先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」とし、村山・小泉談話の「反省とお詫び」を「自虐史観」とする勢力に歩み寄る立場を示した。
 1965年の「日韓基本条約」で韓国の傷痍軍人、被爆者、元「慰安婦」などの賠償放棄と請求権を消滅させたが、さらに今回の日韓合意で慰安婦問題は過去のものと切り捨てたのである。

 安倍首相は昨年12月27日(ハワイ現地時間)に真珠湾で行った演説で、「戦争の惨禍は、いまだ世界から消えない。憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなろうとしない。寛容の心、和解の力を、世界はいま、いまこそ必要としている」と強調した。
 この演説はかつての対戦国・アメリカに向けたものだが、アジア太平洋戦争で「多大の損害と苦痛」を与えたアジアの国々と民衆、とりわけ日韓に横たわる慰安婦問題に向けるべきである。




 
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