社会保障費5000億円圧縮
国会は16年度第三次補正予算を野党の日本維新の会も賛成して1月31日の参院本会議で可決・成立させた。維新は、臨時国会で第二次補正予算やカジノを解禁するIR整備推進法に賛成し、政権寄りの姿勢を強めている。補正に続き衆院予算委では2月1日から史上最高の97兆4547億円に上る17年度予算案の審議が始まった。予算は、国民生活の安定とその前提である平和を築くためにあるべきだが、安倍自公政権の予算案は平和と人権を顧みないものだ。
まず、社会保障費が大きくカットされている。「1400億円削って5千億円に抑えた」と報道されているが、間違いだ。厚労省は年間1兆円程度の「自然増」を抑制して6400億円しか概算要求しなかった。その要求との比較で1400億円削減との表現となり、国民生活の圧迫度が薄められているのだ。 安倍首相は施政方針演説で、「累次の改革が実を結び、かつて毎年1兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、今年度予算に続き来年度予算においても、5千億円以下に抑えることができた」と自賛した。だが、その帳尻合わせは年金や医療、介護などの受給額減額や保険料、利用者の負担増に直結する。
年金は04年に「100年安心」の大宣伝で大幅改悪されたが、「制度維持」の脅しで改悪が続くのは間違いない。また、年金支給資格を25年から10年にしたというが、その予算措置は256億円、雀の涙ほどでもない。その裏で低年金者への最大月5千円の上乗せは見送られた。焦点の子育て世代、若年世代向け予算はどうか。雇用の不安定化、賃金低下、教育費の高騰は家族総働きを強いている。保育所や学童保育所は絶対的に不足している。これも構造改革政治の結果だ。
保育所の民営化の流れを制度的に作り、そこでは民間保育士の低賃金や無権利状態を前提としてきた。その結果、保育士不足で子どもが入所できない問題が広範に起き、保育士確保の自治体間競争が激烈となっている。
新年度予算では、平均6千円の賃金引き上げと、経験年数によって月額5千円から4万円上乗せされるが、労働に見合う、生活できる賃金には程遠い。
軍事費は過去最大
一方、中国等との軋轢を演出し、防衛費の増額キャンペーンの下で、防衛予算は5兆1251億円と過去最大だ。欠陥機オスプレイの4機分393億円や、6機の最新鋭ステルス戦闘機F35の946億円など、アメリカからの購入費は総額3596億円に上る。
しかし、軍事費突出はこれだけではない。16年度第3次補正予算には防衛省分が1769億円計上された。
その内容は、護衛艦、潜水艦、哨戒機等の整備などに1375億円、弾道ミサイル攻撃への対応で331億円、自衛隊員の給与改善55億円。そして、災害被災施設等の復旧8億円が計上されている。災害対策アピールの裏で、戦争できる軍隊としての装備を足早に強化している。
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