国益論*\走の危機
トランプ米大統領就任後初の日米首脳会談は2月10日、ワシントンで行われ、フロリダでのゴルフ接待も含めて「蜜月」を演出した。欧米メディアは冷淡に報じ、日本のメディアは、尖閣への安保適用明言、米軍経費増額や自動車関税、為替問題への踏込みなしで「一安心」の論調一色だ。しかし「蜜月」の先には地獄がある。
(2面「道しるべ」)
共同記者会見で、「治安のために新たな(入国規制の)大統領令を出す」と明言するトランプ氏を安倍首相は「内政問題。コメントを控える」と擁護した。全世界の顰蹙(ひんしゅく)を買うだけではない。日本もイスラムの敵とみなされテロの標的とされかねない。
尖閣問題も平和的解決でなく、米の「核の傘」を含めた軍事力に依存する姿勢を、「行動予測不能」なトランプ氏と確認したことはアジアの緊張を増幅させる。そして、沖縄の民意を踏みにじる辺野古基地建設、オスプレイ配備が強行される。
麻生副総理とペンス副大統領で「日米経済対話の枠組み」が合意された。安倍首相が懸命に火消しに努めた日本の年金資金を米国の高速鉄道建設に投入する構想もある。
二国間交渉は日米間で秘密裏に行われてきたTPP交渉をベースに、全分野での日本の市場開放、規制緩和の方策も具体化するのである。日米両国の資本家にとっては願ってもないことだが、国民にとっては安心・安全、雇用が破壊される。
そして「国益」をかけたポーズで日米の「2国間」の駆引きが始まる。「経済国益のために、安全保障を米国に依存する弱み」を克服すべきだというメディアの論調が公然化している。「蜜月」は九条の危機でもある。
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