大阪高裁が大津地裁の“差し止め”決定を覆す
福島原発事故から6年。福島県は3月31日、自主避難者への住宅無償提供を打ち切り、政府は3月31日と4月1日、3町1村・約3万2000人が対象となる区域の避難指示を解除、棄民・帰還政策を強行している。一方、裁判所は高浜原発再稼働を認め、伊方原発の差し止めを却下した。
運転中の原発を司法が初めて止めた高浜原発大津地裁仮処分決定から1年余の3月28日、大阪高裁には近畿はじめ全国から市民ら数百人がかけつけ、関電による抗告の審理決定を待ったが、住民側弁護士が広げた垂れ幕には、「不当決定!国民・県民の世論に逆行」。怒りのシュプレヒコールが湧き上がった。
大津地裁の決定は、新規制基準の問題点を暴き、安全の根拠の立証責任を関電に求め、十分な避難策確立も求めた画期的なものだった。大阪高裁(山下郁夫裁判長)は、この決定を根底から覆し、高浜原発3、4号機再稼働容認を決定した。
住民側弁護団の井戸謙一団長は記者会見で、「決定は新たな安全神話」とし、「決定はほとんど関電・規制委の言い分の引き写し。規制委や電力会社、政府・行政の暴走にストップをかけられるのは、今や司法しかないという責任・自覚のかけらもない」と怒った。
さらに井戸氏は、「新規制基準に適合しているかどうかだけを問題とし、過酷事故は考えられないから汚染水処理策は完備していなくてもよい、規制の安全性の立証責任は住民側にあるとした。不当な枠組としてこれまで原発裁判で押し付けられていた伊方最高裁判決よりもさらに住民側が不利な立場になる、想定していなかった判断だ。3・11前の裁判基準より後退した」と厳しく批判した。
全国脱原発弁護団の河合弘之共同代表は、「私たちは屈することなく、闘いをやめない。勝つまで闘う」と宣言。辻義則原告団長は、「大津地裁で本訴の勝利に向け引き続き闘う」と決意を表明した。
(稲村守)
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