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「自主」避難者 困窮さらに |
住宅の無償提供 打切りから3月 |
東電福島第一原発事故の「自主」避難者に対する住宅無償提供の打ち切り(3月31日)から3カ月が過ぎた7月5日、「さよなら原発1000万人アクション」は東京都内で講座を開いた。この中で「自主」避難者の生活困窮が進み、苦悩がさらに深くなっていることが明らかにされた。
講座冒頭、主催者を代表してルポライターの鎌田慧さんが挨拶。避難の協同センター事務局長の瀬戸大作さん、原発事故被害者団体連絡会幹事の村田弘さん、原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんが現状報告と問題提起した。
離婚で母子家庭が増
瀬戸さんは2016年7月に避難当事者と支援者が、避難先での生活支援や情報共有などを目的に「避難の協同センター」を結成して活動してきたことを報告した。
そのなかで、当初は生活支援、特に「住まい」「生活困窮」などの相談や解決に奔走してきた具体例を挙げた。そして、政府の住宅無償提供が今年3月末で打ち切られ、4月以降の相談と活動内容が変化し、生活困窮と生活保護に関する相談と同行が増えたと指摘。
特に避難生活が長期化するなか、家族関係が壊れ、離婚が増加し、避難者の多くが「母子避難」から「母子家庭」となり、生活に困窮している実態を明らかにした。こうした避難者の実態を国も自治体も正確に把握していない現状を踏まえ、政府に対する6点の要請内容を示した。
誠意ない福島県知事
村田さんは、政府と福島県に「2017年緊急要求」を出して交渉を求めており、福島県とは7回交渉したが、内堀雅雄県知事は誠意がなく一度も交渉に出ないことを指弾した。
避難の権利保障せよ
森松さんは、事故発生後の5月に父親を福島に置いて、幼児2人と共に大阪に「自主」避難し、それ以来避難者の立場からの活動内容と問題を提起した。
その一つに、放射線事故は通常の事故と違い、色も臭いも感じないことによる住民の避難の認識に幅があること。また、自主避難地域では避難の制度的保障はなく、財力や親せきもなく、避難したくても避難できない人が多いこと、しかし、被曝のリスクを避けるため「避難の権利」「健康を享受する権利」があり、政府も県も保障すべきだと述べた。
また、「自主避難」は「自力避難」と言い変えて欲しいと要望。
そして、住宅無償提供の打ち切りは生活の命綱を断つこと、100万人に1人の甲状線がんの罹患が、福島県民では37万中191人となっている異常さも指摘し糾弾した。
会場からの質疑後、鎌田さんが、「様々な反原発運動があり、更に頑張らなければいけないが、共通するフクシマ被害者の実態を知り、支えていく運動の共有化の必要性がある」を強調した。フクシマの闘いは今年3月17日の前橋地裁判決が「東電は巨大津波を予見しており、事故は防げた」とし、損害賠償を認め、一歩前進した。
また、検察による2度の不起訴処分から検察審査会で強制起訴された東電元社長ら3人の業務上過失傷害裁判の第一回公判が6月30日に開かれ、「津波の予見性」などを巡って新たな局面に入り、今後フクシマ被害者の損害賠償などの裁判の判決が予想される。
一方で、安倍内閣は2020年東京五輪・パラリンピックにかこつけてフクシマ被害者に対する棄民政策を進め、原発事故も、被害者の存在も忘れさせようとしている。
フクシマを忘れず、教訓化し、原発の再稼働も輸出もさせないため、「生き証人」である原発被害者の闘いを全国で支える運動の強化が求められている。
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