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  4. 2017.11.07
 
総選挙 総括の視点
与野党の経済政策 


 内閣不支持率が支持率を上回るなかで野党が大敗した最大の要因は、議席亡者の右往左往だった。だが、総選挙における与野党の経済政策を検証しておくことがより重要だろう。(野崎佳伸)


 野党は訴え切れず


 小池百合子・希望の党代表は選挙にあたりユリノミクスと称して、国会議員の歳費や定数削減、規制改革の徹底、道州制導入など「小さい政府」を掲げつつ、他方で消費増税凍結、企業の内部留保への課税やベーシックインカム(BI)の導入を主張した。ところが後の二つは選挙公報から消えた。
 立憲民主党も消費増税凍結を急きょ主張したが時間的制約もあり、その経済政策は十分練られたものとは言えなかった。選挙公報を見ても、経済政策はおろか、およそ政策提言らしいものは何もない。
 共産党や社民党はさすがに真っ当な政策を掲げたが、ほとんどかえりみられなかった。いかにも両党の言いそうなことと、有権者に飽きられてはいないか。
 枝野幸男・立憲代表の街頭演説には人だかりが増したが、消費増税凍結の主張はほとんど聞かれなかった。政権選択選挙を巡る有権者の最大の関心が景気や社会保障などの経済政策にあることは国内外で常識であるにもかかわらず、野党がそれを訴え切れなかったのがもう一つの敗因であろう。
 対して与党はアベノミクスの成果を数字を並べてたてて誇示した。いわく、「GDP(国内総生産)や税収が増えた、求人倍率が上がった、雇用が増した」。もちろん誇張や歪曲、統計改ざんも含まれる。前原誠司・民進党代表が「トンビに油揚げをさらわれた」と悔しがった「消費増税の使い道変更」のように、野党の政策を盗むのも常套手段化している。
 ただし、選挙前には「アベノミクスに期待せず」と答えた人が56%に達していた。一方、「期待する」(41%) と答えた理由は「働き方改革に取り組むから」が最多。その実現で何を望むかについては「子育てや介護と仕事の両立支援」が最多で、「正社員と非正規の不合理な待遇差是正」が続いた。幻想は少なからず続いているのだ。


 アベノミクス5年


 東日本大震災・原発事故や欧州危機による円の独歩高など、民主党政権には同情すべき不運な点もあった。対して安倍晋三首相はツイテいる。第一に、12年の総選挙直前から日本経済は回復に向かっていたのを自分の成果として取り込んだ。第二にオリンピック招致。第三に南シナ海や朝鮮半島の緊張の利用。第四が、今次総選挙中の円安による株価上昇だ。
 アベノミクスの手法の一つは「やってる感」の演出にあるとは御厨貴東大名誉教授の指摘で、つまり「目先を変えて期待をつなぐ手法」。二つには官僚や日本銀行政策委員等の人事の掌握。加えて統計や株価の操作だ。GDPは統計のとり方を変えてアベノミクスの成果を水増しし、株価はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) や日銀などの「5頭のクジラ」に買い支えさせている(明石順平氏)。


 大胆で明確な策を


 安倍首相が不都合な経済指標を決して口にしないとは言え、野党がそれを指摘するだけでは飽きられつつある面もあろう。「野党がなぜ負けるのか。アベノミクスに対して欠点しかあげつらわないからだ」とは、御厨貴氏の弁でもある。
 急がれるのはアベノミクスへの明確で大胆な対抗策だ。安倍首相の認める「デフレ脱却は道半ば」に対して「デフレの正体は賃金下落」であり、「賃金や所得の大幅な引上げが日本を救う」と声を大にして言おう。定昇込み3%の賃上げ要請程度では到底足りないし、大胆な再分配の強化が必要だと。
 加えて、安心をもたらす社会保障の再設計図の提示が急がれる。BI導入はその一例だが、世論に配慮しつつ部分BIの導入から検討するもよし。その際、優先順位をどうするか。
 また、普遍主義的なサービス提供拡充の道とも排除しあってはなるまい。とにかく各人が知恵を出し合い、良質な野党間で対抗策の合意を形成していく努力こそが大切だ。




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