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トランプの〝武器販売〟歴訪 |
アベ同調で緊張増す |
トランプ米大統領は11月5~7日の間、日本を訪問。その後、韓国、中国、ベトナム、フィリピンのアジア4カ国を歴訪した。日米首脳会談では盟友・安倍晋三首相との絆を改めて演出した。日米首脳は、対朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政策の更なる強化と、対中国包囲網構築で一致し、アジア太平洋圏を射程に入れた日米同盟・軍事力強化が一層鮮明になった。ただ、対日貿易赤字と貿易障壁問題は、「宿題」となったようだ。14日までのアジア歴訪を整理する。(高橋俊次)
安倍首相は、6日の日米首脳会談を「朝鮮に対する圧力を最大限高めることで完全に一致」と誇示した。安倍政権は朝鮮に対する「対話のための対話は無意味」とし、「制裁と圧力」一辺倒だ。日米首脳の電話会談はどの国の首脳より回数が多く、米大統領の朝鮮政策の“良き相談相手”である安倍首相主導の合意とみられる。
対中国の軍事網へ
日米首脳の目論みは、「自由で開かれたインド太平洋戦略」でも一致する。「戦略」は、昨年8月のアフリカ開発会議で安倍首相が提唱した。その狙いは日米両国が対中国軍事網の構築と、「自由で開かれた」アジア自由経済圏だ。とりわけインドを「同盟国」とし、市場としている。
インドのモディ首相とトランプ大統領は今年6月、インドへのC17輸送機など対印輸出19億ドル(2100億円)の契約と、米日印の共同軍事演習を確認している。安倍首相は9月のインド訪問で、モディ首相と中国に対する海洋安全保障を確認。経済では日本の新幹線方式での高速鉄道建設など、総額約1900億円の円借款供与で合意している。
インドへは14年から5年間、官民で3兆5000億円の投融資で合意し、また、原発輸出可能な日印原子力協定も今年7月20日に発効している。
ベトナムに対して安倍首相は今年1月にフック首相と会談し、新造大型巡視船6隻の提供、下水道などのインフラ整備など総額約1174億円の円借款の供与を表明している。
フィリピンに対しては海洋警備のための巡視船10隻の提供を開始。さらに、安倍首相は10月30日に訪日したドゥテルテ比大統領と会談。朝鮮への圧力強化と中国の海洋進出への対処を合意し、インフラ整備などの5年間で1兆円規模の支援を約束した。
このように日米両政権は、対中国包囲網のための「自由で開かれたインド太平洋戦略」を軍事・経済で一体的に進めており、今回の日米合意はその役割の確認だ。
偶発的な衝突から
トランプ5カ国歴訪は、前政権の「リバランス戦略」を転換、「インド太平洋戦略」として朝鮮への圧力と制裁の強化、中国の海洋進出・現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に対抗する日米を基軸にしたアジア同盟の構築が目的だ。
トランプのアジア歴訪は、緊迫する朝鮮半島情勢を一層危険な状態に陥れた。日米合意直後の7日、安倍政権は朝鮮への制裁措置として9団体・26個人を資産凍結の対象と決定した。
安倍首相は「戦争は望んでいない」と言うが、制裁と圧力、朝鮮半島周囲での米韓合同軍事演習やB1爆撃機、空母3隻の共同訓練は、朝鮮にすればかつてない挑発であり、偶発的な衝突から全面戦争になる危険性がある。米朝は、無条件で対話の窓口を開くべきだ。
一方で「朝鮮脅威」は日米両政権に都合のいいキャッチコピーになっており、「脅威」を口実にトランプ大統領はF35Aステルス戦闘機や陸上イージスシステムなど、高価な兵器の購入を迫り、安倍首相はそれに応じる。
トランプのアジア歴訪は「朝鮮脅威」を煽って自国の軍需産業を含めた雇用と需要を喚起し、下落し続ける支持率を回復する狙いがある。安倍首相も「朝鮮脅威」を「国難」と言って火事場泥棒解散を仕掛け、軍事費増額の口実にしている。
さらに安倍首相は、「朝鮮脅威」を改憲策動に利用している。安倍政権による「朝鮮脅威→自衛隊増強→憲法改悪」の一連の悪巧みを見抜いて闘わなければ、平和を手に入れることはできない。
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