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  4. 2017.12.12
 
野望実現へ安倍首相の思惑
米復帰へ合意急ぐ 



 TPPを脱退した米を除く日、豪など11カ国は11月11日、ベトナムのダナンで「包括的・先進的TPP」(新TPP)に大筋合意した。継続協議事項を解決し、すべての参加国が署名して6カ国が批准すれば発効(19年~20年頃)するという。(河村洋二=全国農問連事務局長)
 「新TPP」は、米の復帰を前提にTPP協定の「医薬品データ保護期間の8年統一」や「投資家と国の紛争解決手続(ISD条項)」など20項目を凍結し、参加国全体のGDP85%超え条項を外し、4項目の継続協議事項(①国営企業に対する優遇禁止措置②文化産業への例外扱い③サービス・投資問題④労働紛争処理)を残して合意が図られた。しかし、新TPPは合意を急いだため内容が不完全で流動的。現に合意した内容を11カ国首脳会議(11月10日)で確認する予定だったが、カナダが「合意していない」と反発し、首脳会議は中止に。そこで急遽、閣僚会議に切り替えて合意内容を再確認する大失態を演じた。共同議長国・日本の「初めに合意ありき」の強引な交渉の進め方が各国の批判を招いたといわれる。


 新TPPは農業については、触れていないが、米が復帰してもしなくても、日本は農産物輸入枠のさらなる拡大を迫られることは必至だ。また米が復帰しなければ日米FTA交渉となることも必至。その際、TPPで確保した米の農産物輸入枠以上の輸入を日本に求めてくることも必定だ。なぜなら日本は、7月の日欧EPA大枠合意でチーズや生乳についてTPP以上の輸入枠をEUに与えているからだ。
 米のTPP復帰は「極めて悲観的」といわれるが、仮に米が復帰しても結論は同じ。日本がTPP以上の輸入枠を保証しなければ復帰しないだろう。


 日本が農業・農村を犠牲にしてTPP新協定を急ぐのは、第一に今年7月の日欧EPA大枠合意の時のように安倍首相の外交成果を誇示するためで、安倍外交の常套手段の「やったぁ」感の演出で内閣支持率を高め、「モリ・カケ疑惑」の危機突破を図る魂胆だ。
 第二は、米を復帰させ、日米財界・多国籍企業の意向を活かす中国包囲網を強化しながら新自由主義的貿易秩序(アメリカンスタンダード)をグローバルに確立することだ。
 第三は、安倍首相の野望を達成するため。安倍首相はTPPに復帰した米をバックに中国やASEANへの発信力を強め、自ら「アジアの盟主、世界の安倍」として振る舞いたいということ。しかし、米抜きのTPPではその発信力は半減する。そこで、TPP、日欧EPA、新TPPに奔走しているのだ。


 日米財界・多国籍企業の利益を守る安倍首相のために食料、農業、農村、環境、平和、労働者が犠牲にされている。安全安心の食料、農業、農村を再生するためには、TPPから1日も早く脱退し、日欧EPA大枠合意、新TPP大筋合意に反対しなければならない。


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