2018.06.12
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一部手当認める |
非正規の格差『不合理』 |
同じ仕事をしているのに正社員と賃金や手当てで格差があるのは不合理な格差を禁じた労働契約法20条に違反するとして、有期雇用社員や定年後最雇用の嘱託社員が是正を求めていた2つの裁判で最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は6月1日、一部の手当の不支給は不合理な格差で違法とする一方、定年後の再雇用については格差を容認する判決を出した。いずれも裁判官4人全員一致の判決で、同法に関する最高裁判決は初めて。
ハマキョウレックス
静岡県浜松市に本社がある物流会社・ハマキョウレックスの彦根支店(滋賀県)でドライバーとして働く非正社員が、正社員と同じ内容の仕事をしているのに賃金に格差があるのは不当だと訴えた裁判で第二小法廷は、会社側の上告を退け、通勤手当など一部の手当を契約社員にも支払うよう命じた大阪高裁判決(2016年7月)が確定した。同様な形で、手当格差をしている企業は、見直しを迫られる。
通勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当については「職務の内容によって差が生じるものではない」として、労契法20条が禁じた「不合理な格差」に当たると判断した。
また、2審で認められなかった皆勤手当についても差を設けるのは不合理として大阪高裁に審理のやり直しを命じた。住宅手当については、正社員には引っ越しを伴う配置転換があることから、不合理な格差には当たらないとした。
長澤運輸
神奈川県横浜市にある運送会社・長澤運輸で定年後に再雇用された非正社員3人が待遇格差の是正を求めた訴訟で第二小法廷は、正社員と非正規社員の賃金格差が不合理かどうかは、「各賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」と格差を容認した上で、精勤手当は「労働条件の相違は不合理」として支払いを命じたが、能率給や職務給など給与や賞与、住宅手当や家族手当などの諸手当は認めなかった。
精勤手当を入れた時間外労働手当の計算については不合理と判断、東京高裁に差し戻した。16年5月の東京地裁判決は、「仕事の内容は正社員と同一と認められる。特別な理由もなく、賃金格差があるのは違法」と判断、会社側に対して正社員と同じ賃金を支払うよう命じていた。 これに対し、会社側は直ちに控訴、東京高裁は16年11月、「定年後に賃金が引き下げられることは社会的に受け入れられており、一定の合理性がある」と判断。運転手側の訴えを認めた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却、原告が上告していた。
最高裁判決について原告側代理人の宮里邦雄弁護士は判決後の記者会見で、「精勤手当が認められた点は東京高裁判決よりましだが、格差容認は受け入れがたい」、原告人も「残念でくやしい」「受け入れられない」「くやしい」と話した。
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