2018.06.26
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米朝首脳会談 |
歴史的な成果 |
東アジアの平和へ
~「板門店宣言」が切開く~
トランプ米大統領と金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)の6月12日の「共同声明」は、朝鮮戦争を終結させ、南北統一を実現する道を切り開いた。
戦争と分断に転機
「声明」はトランプ氏が「北朝鮮に安全の保証を与えることを約束」し、朝鮮戦争の終結も含意している。それは「声明」に「『板門店宣言』を再確認」とあることからも明確だ。これに応え「金正恩氏は朝鮮半島の完全な非核化に向けた確固とした揺るぎない責務を再確認した」とある。
「板門店宣言」では「朝鮮半島の非核化」を確認したのに、日本政府もメディアも「北の非核化」だけを問題にしてきた。核戦略爆撃機や原子力空母を動員した米国の軍事演習や在韓米軍をそのままに、朝鮮にだけ「非核化」を求められるはずがない。この現実をトランプ氏も認めたことが、「板門店宣言」に続く金委員長の非核化の再表明になった。
このように「板門店宣言」を米国も承認し、実行の責任を明言したのが「共同声明」だ。文大統領を実現した昨年のロウソク革命の成果が、朝鮮半島では戦争も起こさせないという半島民衆の熱意になり、事態を揺り動かしたのである。韓国で反「北」保守政権が復活しない限り、「共同声明」から後戻りはできない。
不可逆交渉に期待
「共同声明」は、歴史を転換する大事業の入り口だ。核廃棄と米軍縮小の「ディール」もあり、時間がかかるのは自明であり、「行程表」などすぐに示せるはずがない。「朝鮮戦争終結」も中国、韓国を加えた平和協定の協議が必要だ。
「この共同声明を完全かつ迅速に実行するため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による今後の追加交渉をできる限り早く開く」とある。6月中の協議開始が予定されている。また、8月の恒例の米韓軍事演習の中止・縮小はほぼ確実で、今後の「不可逆的」交渉に世界は期待している。
文政権与党が躍進
米朝会談翌日の6月13日に投開票された韓国統一地方選では、文大統領与党が17の知事選で9から14に躍進。自由韓国党は8から2に激減した(保守系無所属1)。基礎自治体長(市長)選挙では民主が80から151へ倍増、自由党は117から53に半減した(他に無所属29)。左翼政党(正義党、民衆党、緑)では正義党が自治体議員選挙で躍進した。
国会議員補選で12選挙区中民主11、自由1と合わせ、米朝会談を実現させた文政権への支持の高さを示した。
異常な日本のメディア
朝鮮の朝鮮中央通信は6月13日、トランプ氏が米朝首脳会談で8月の米韓軍事演習の中止に理解を示したと報じた。同日、トランプ氏は軍事演習を「やらないで大金を節約する」とツイートした。
一方、14日の日米韓外相会談では、「米朝共同宣言」を高く評価する韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とは反対に、河野太郎外相が「経済制裁を緩めるな」と主張。小野寺五典防衛相はマティス米国防長官との電話会談で「在韓米軍縮小」と8月の演習中止に水をさした。
こうした中で日本のメディアは一斉に権力の意向を忖度する論調を展開した。悪いのは『朝日』で14日1面トップに「『米韓演習中止』波紋―『非核化』確証得られぬまま発言」とトランプ発言を批判し、2面~3面も同趣旨の論調で埋めた。しかし、朝鮮は核実験場爆破や長距離弾道ミサイル実験中止など実行した。ポンぺオ国務長官と朝鮮高官の協議を控えており、次は米国が譲歩するのは当然の成り行きだ。15日には米政府としても8月演習の中止を示唆した。
メディアに共通するのは、米国が短中距離ミサイルなど日本への「脅威」解消を置き去りにして交渉すれば、「日本の安全保障は厳しさを増す」(『毎日』6・13)とか、朝鮮戦争和平協定と在韓米軍撤退で日本の「安保環境が激変する望ましくない動きも現実味を増す」(『日経』6・13)といった論調だ。
テレビには「日本核武装論」や拉致問題でも日本が交渉主体になれないのは「安全保障を米国頼みだから」と言う論者も登場する。
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