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続発する悲劇 |
生活困窮者の共同住宅火災 |
札幌市の生活困窮者共同住宅で1月31日に起きた火災は、居住者16人中11人が死亡する大惨事となった。死者の多くは生活保護受給者だった。低年金で保証人もない高齢者は、不動産屋に門前払いされるケースが多い。公営住宅建設や困窮者住宅など公的補助の欠如が、続発する悲劇の原因だ。
公的補助が欠除 〝劣悪〟の合法化さらに
札幌市の施設は築50年で、かつての旅館を転用したもの。消防法などでは「下宿」とされ、スプリンクラーの設置など義務付けられていなかった。札幌市は、スプリンクラー設置が義務の有料老人ホームの疑いがあると運営会社に照会していたという。
北海道警は業務上過失致死容疑も視野に捜査を始めたという。しかし、会社の責任を追及するだけで済む問題ではない。困窮する高齢者施設の同様の事故は昨年だけでも北九州市の施設全焼で6人、秋田県横手市で5人。09年以降だと40人以上が犠牲になった。
この種施設の運営会社には、貧困ビジネスも少なくない。しかし、NPOが困窮者の住宅提供に努めているところもある。そういう施設は防火設備などの規制がある福祉施設だと費用がかかり、古い家屋を下宿として転用し、少しでも安く提供しようとする。
政府は、こうした事故が起きても規制緩和を進めている。折しも札幌市の事故の翌日、国土交通省は建築基準法を規制緩和する法案の今国会提出を決めた。民間業者が空き家を福祉施設に転用する際の耐火基準や、用途変更手続きの緩和だ。
また、耐火基準確認のための戸建住宅の用途変更の際の「建築確認」も緩和する。福祉施設行政の貧困を、安全基準を緩和し民間業者が参入しやすいようにして糊塗しようとするものだ。「民泊」の規制緩和とも共通する。
生活保護基準の引下げのため!?
奈須りえ・東京都大田区議の話
生活困窮者共同住宅のような痛ましい事故の背景には、高齢者など保証人の問題や公営住宅の不足、公的補助の欠如などがある。
空き家問題など住宅供給量は過剰で、安全や衛生基準を高め安価で質の高い住宅を供給することは可能だが、国は特区民泊などさらなる規制緩和で、劣悪な環境の住まいを合法化してきている。これは、政策的な誤りで、年金カット、さらなる生活保護基準の引き下げのための住宅費分の負担を削減する準備のようでもある。高齢者をはじめ生活困窮者のさらなる住環境悪化が心配される。 |
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