2018.09.25
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日本の平和と暮らしに影響 |
米中貿易戦争 |
7月に始まった米中貿易戦争は、トランプ政権が対中制裁の第4弾を9月9日に示唆した。第一弾以降を合わせると対象となる中国製品はほぼ中国からの輸入の全製品をカバーする規模となる。一方、中国も報復関税で対抗し屈する気配はない。中国政府の発表によれば8月の貿易統計では対米貿易収支の黒字は前年同月より18・4%増え、「制裁」の効果は見えない。
「産業安保」の危機
米中の経済戦争には、2つの側面がある。トランプ政権による未曾有の「制裁」関税の直接の口実は、中国による「知的財産権の侵害」である。軍事技術に直結する最先端技術の中国への流出に、いわゆる「産業安保」の危機を米国が危惧している。
宇宙、サイバー分野が現代戦の抑止力では主役になりつつあるが、中国のAI技術の発達はめざましい。シリコンバレーやMIT(マサチューセッツ工科大学)に優秀な若手を大量に送り込み、米国企業に投資・買収してノウハウを入手するなどして得た軍事抑止力もバックに、中国は「一帯一路」構想で米国を脅かしている。
しかし米国の資本も中国に投資し、半導体企業の多くは中国からの部品輸入に依存している。多国籍化し相互浸透した資本の利益と、国家の「安全保障」の利益が錯綜しながらも、政治的緊張は強まると思われる。朝鮮危機の緩和で「仮想敵不在」に困った安倍政権は、軍備拡張と9条改憲のために対中緊張を最大限利用する。
文字通り経済戦争 もう一つは文字通りの経済戦争だ。自国産業防衛はトランプの生命線。中国に勝てそうもないと焦ったトランプ大統領は、9月7日に対日貿易赤字削減に非協力な日本に「報復」を示唆した。
矛先を日本に向け、9月下旬の日米首脳会談と事前の閣僚級貿易協議で自動車、農産物などの市場開放を要求するのは必至。中国から報復関税をかけられた大豆などはまず売り込まれるだろう。
米国は、TPPから離脱して日米の二国間自由貿易協定(FTA)を求めている。日本政府は先の通常国会で成立したTPP11協定の範囲内を建前として譲歩を最小限にすると言うが、協定自体に大資本に有利な有害条項や悪名高い投資家対国家紛争解決(ISDS)条項がある。
安倍政権は、総裁選が終わってしまえば農業切捨てや必要な国内規制の緩和にいっそう向かう。また、米国の言い値での武器購入で要求をかわそうとする。日米首脳会談で今度は宇宙兵器でも売りつけられかねない。
米中貿易戦争は、日本の平和と暮らしにとって重大な影響を及ぼすので要注意だ。 |
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