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2018.10.16
 
日米FTA
生活破壊の道
大資本に利益 農畜産を破壊 ~安倍改造内閣 踏み込む~

  安倍晋三首相とトランプ米大統領は9月26日、ニューヨークで会談し、安倍首相はFTA交渉の開始と武器購入を約束した。米国の対中国戦略も絡み、日本の農業破壊や規制緩和など第四次安倍改造内閣は、早くも民衆生活破壊の道に踏みこんだ。


「共同声明」の要点は、以下の内容だ。
 ①物品貿易協定(TAG)やサービスを含む重要分野について交渉開始。TAG後、他の貿易・投資事項についても交渉する。
 ②日本の農林水産品関税についてはTPPで約束した内容が限度。米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指す。
 ③第三国の非市場志向型政策や慣行から日米両国の企業と労働者を守るための協力を強化するため、WTO改革、知的財産収奪、技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業による歪曲化等に協力して対処する。

 安倍首相は記者会見(26日、ニューヨーク)で、TAGとFTA(二国間自由貿易協定)は「全く異なる」と弁解したが、全くの詭弁だ。強大国と一対一の交渉では不利なので、TPP(多国間協議)への米国の復帰を求めてきた建前も捨て、米国とFTA交渉を始めるのである。

農畜産だけではない 
 トヨタなど空前の利益を上げている自動車資本の利益のために、農畜産業に犠牲を強いるのがまず問題だ。「農産品関税はTPPの水準までにした」と安倍首相は強弁する。 
 十数年かけて9%に輸入関税が下がるTPPの約束だけでも農畜業は不安だった。輸入牛肉の半分近くを占める米国産牛肉の関税は現在38・5%だ。これが下がれば畜産農家は大打撃を受ける。
 それだけではない。トランプ大統領は、「もっと米製品を買わないとダメだ」と言ったら「日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」と胸を張った。自動車資本の利益を守るために、日本はイージス・アショアのようなものにまで税金をつぎ込むのである。
 日本は自動車への関税は、すでにゼロだ。米国は日本車への高関税で恫喝し、日本の「非関税障壁」として自動車の安全面の規制緩和を求めるだろう。
 例えば、自動走行車の一般道走行への規制緩和などだ。また、自由化の目玉の一つは米国の医薬品だ。ジェネリック推奨で医療費抑制をしている日本に、高額医薬品を売り込みたい。これはさらなる病床削減、患者負担増などへのしわ寄せにつながりかねない。
 TAG完了後には投資も含む全分野の交渉に移るが、米国資本の投資条件整備=雇用、安全、環境など全面的な規制緩和をもたらすのは明白だ。日本の大企業も大歓迎だ。

全分野の規制緩和へ
 「共同声明」には「知的財産権」、AI技術を「産業安保」として防衛し、中国と対抗する米の国家意思が示されている。「国有企業による歪曲、貿易歪曲的な産業補助金などへの対処」をうたう「WTO改革」も中国の「市場開放」を意識している。
 だが、ターゲットは中国だけではない。日本の水道、教育、医療など公的分野への多国籍資本の自由な参入にもつながる。
 日本の自動車産業を守ることが「国益」ではない。10月2日には米・カナダ・メキシコのNAFTA合意がされ、日産、トヨタなどが戦略練り直しと報じられた。
 カナダとメキシコの両社工場からは、150万台も米国に輸出しているからだ。日本からの輸出170万台に匹敵する。資本は有利な生産拠点を求め自国労働者を切り捨ててどこにでもいける。
 しかし、農畜産業はそうはいかない。規制緩和で安心と安全を脅かされる住民も移住できない。国内法より、投資家利益を優先させるISDS条項もある。国民の全生活を脅かす日米FTA交渉を監視しよう。