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2018.11.20
 
韓国大法院の徴用工判決
日韓条約に対する冷静な反省が必要
日本政府の反発は異常
        
 韓国大法院(最高裁)は10月30日、被告の新日鉄住金に元徴用工4人への賠償金支払いを命じた。これに対し安倍政権と日本のメディアはヒステリックに反発している。安倍晋三首相は「国際法に照らしてあり得ない判断」と断言。河野太郎外相に至っては「(日韓条約)で日本が韓国に支払った金は当時の韓国予算の3倍」と札束がすべてという品のなさをさらけ出した。

 日本政府は、1965年締結の日韓条約ですべて終わったのに、「国と国の約束」を破るのは両国関係を根底から危うくさせると威圧している。経団連など経済4団体も、判決が韓国への「投資やビジネスを進める上での障害になる」と「毅然たる対応」を求めた。朝鮮半島の件ではメディアは新聞も含め体制に追随する傾向が強いが、今回も「反日ナショナリズムに迎合」(読売)、「日韓関係の根幹を揺るがしかねない」(朝日)といった具合だ。 

戒厳令下で締結強行
 日本政府の主張は、戦時犯罪への個人の損害賠償請求権は「日韓条約」で放棄されたというに尽きる。

 日韓条約はどういう環境で締結されたか。日本では、韓国だけを国交回復の対象とすることは南北分断を固定化し、ベトナム侵略戦争など米国の軍事戦略を支えるために日韓の反共同盟を強化するものだとして反対運動が起きた。

 批准の国会は3日間にわたる徹夜国会で公明も含め野党は最後まで抵抗し、自民党と民社党だけで強行採決した。韓国では、朴正煕軍事独裁政権が日本からの資金を入手するために個人請求権や日本の占領責任をあいまいにした。「屈辱外交」だとして大規模な反対運動が起きたが、軍隊と戒厳令で鎮圧した。

 条約で日本は無償3億㌦、有償2億㌦の経済援助を、しかも戦争責任を償う賠償金ではなく「発展途上国援助金」などという名目で行った。当時の国家予算に倍する額だが、韓国が賠償請求したのは21億㌦だった。

 一方、朴政権はそのほとんどを戦争被害者個人に支給せず開発独裁の基盤作りにつぎ込んだ。この経過を知りながら5億㌦でも払い過ぎだし、個人賠償も終わったと言い張るのは妄言だ。

反発は何も生まない
 80年代半ばから韓国で民主化が進み、個人請求権問題が再浮上した。日本でも、日韓条約は「外交保護権を相互に放棄したのであって個人の請求権を消滅させたものではない」(91年8月外務省条約局長答弁)とされた。

 国連の「クマワスラミ報告」で戦時賠償への日本の態度が問題にされ、徴用工や「慰安婦」など個人請求権に基づく訴訟が韓国で相次いだ。今回の大法院判決はその決定打だ。

 日本が国際裁判所で争うと言っても韓国が同意しないとできず、ただ問題を長期化させるだけだ。日本政府の判決への反発と日韓条約への執着を是正しない限り、朝鮮への賠償問題を含む日朝国交正常化交渉もうまくいかない。メディアやネットで飛び交う反韓キャンペーンと対決し、冷静な世論を広げよう。