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  3. 2019.08.13
 
参院選から次の闘いへ <中>
朝鮮半島の南北融和を憂慮すべき事項として 
【外交】
 「安倍外交」は、何の成果も上げずに参院選を迎えた。「外交」で右翼的な安倍支持層を活性化させたのは、韓国バッシングだった。

 「同盟国」同士の一方の首相が相手国を「約束を守らない国」「信頼できない国」と断じ、経済的「制裁」に踏み切ったのだ。文在寅大統領は「前例のない非常事態」と述べた。国際的には考えられない事態だ。

メディアを総動員し
 しかも安倍政権は、G20(大阪サミット)と第三回米朝首脳会談の直後からつじつまの合わない論法で、肝心の「不適切な事案」の内容は一切示さず、韓国側が提示した徴用工問題についての妥協案を早くから一蹴し、メディアを総動員して選挙期間中の韓国バッシングを徹底した。

 経済的「制裁」に関する世論調査では、6割近くが「賛成」し、「規制措置」へのパブリックコメントには、1カ月弱で4万件が応募し、賛成が圧倒的多数だった。味をしめた安倍政権は、参院選後いっそう韓国バッシングを展開する。

 文大統領は、これを「朝鮮半島の平和に総力をあげる韓国への挑戦」と断じた。本質はここにある。朝鮮半島の融和の実現は、安倍政権にとっては中国と朝鮮の「勢力拡大」であって、下手をすると米軍の縮小・撤退にもなりかねない、極めて憂慮すべきことである。

 その要が文政権であり、まずは文政権を揺さ振りたいのだ。日本は8月2日に「ホワイト国」除外を閣議決定し、今年末の日本企業資産売却へは報復措置を検討する。10月22日の「即位礼正殿の儀」への韓国要人出席問題も、嫌韓キャンペーンに利用されるだろう。

 米朝の非核化交渉が進展しはじめると、安倍政権は「トランプ米大統領は『北』の短距離ミサイル(米国まで届かない)を容認しかねない」と煽り、日本のミサイル防衛システム強化を策すだろう。朝鮮半島問題は、9条改憲と「自主防衛力」強化のテコであり、韓国バッシングは一層ひどくなるとみなければならない。

対イラン「有志連合」
 一方、トランプ大統領は、対イランの「有志連合」への参加と在日駐留米軍経費負担の5倍化を日本に求めている。米国の対イラン軍事行動は、イラン核合意から脱退した経過もあり、欧州諸国の賛同は得られない。予断は許さないが、米国も簡単に軍事行動に踏み切れない。日本にはイランとの関係もあり、軍事行動には慎重にならざるをえない。

 トランプ大統領のディール(取引き)は、「血を流したくなければ金を出せ」である。安倍政権は、スレスレの線で軍事的協力を探りながら、辺野古新基地建設を強圧的に急ぎ、駐留経費負担増、武器の爆買いなどに巨額の税金を献上するだろう。

 それだけではない、トランプ大統領が「選挙後」と言って待ち構えている日米通商協議が始まる。これが農業破壊や規制緩和で多大な被害をもたらすことは言うまでもない。 安倍外交はトランプ大統領の無理難題には応じ、そのシワ寄せに起因する民衆の不満は韓国バッシングでしのぎ、9条改憲までは突っ走る算段なのだ。