消費税10%の増税まで1カ月を切った。消費税は1989年の導入以来、大企業や富裕層の負担を減らす財源にされてきた。高齢社会への対応はもちろんできていない上に、格差と貧困を助長する制度の性格が極まった。改めて今回の増税を検証する。
税制は社会のあり方そのものだ。まず、競争社会がもたらす貧富の差を少なくする所得再分配機能が、すっかりなくなっている。それは、所得の不平等さの指標であるジニ係数の改善に税が貢献していないことに現れる。
また、社会保障財源として消費税はあまりにも不適切ともいえる。社会保障は基本的人権に関わるが、富を独占する大企業や富裕層が社会的負担から逃避し、庶民同士の支え合いに仕組みを変えることになった。
かつてのような正規が当たり前の雇用があればまだしも、今は非正規労働者が雇用の4割を占め、そのうち1千万人近くの平均年収は186万円。それは単に企業だけではなく、公務職場や外注先にも官製ワーキングプアが広がっている。
自己責任が当然のこととされ、社会保障に強く影響が出ている。人権を守る最後のセーフティネットである生活保護は受給要件が厳しく、かろうじてその壁を乗り越えた受給者の最低生活費は、常に政府の予算編成で削減の対象にされる。
制度維持を名目に、医療制度は窓口負担が増大し、年金制度では受給額が逓減し、ついには高齢期をまっとうするには年金だけでは2千万円足りないと政府が開き直る始末だ。
今回、食料品は軽減税率が適用されるが、軽減ではなく、据え置きだ。しかも複数税率に対応できるレジ導入は遅れ、消費者にポイント付与されるカード決済は、現金決済で自転車操業の中小商店をますます追い込む。
そしてインボイス発行ができなければ取引ができないとなれば、現在免除されている年商1千万円未満の事業者でも課税業者の道を選択せざるを得ない。消費税が基幹財源となった今日、財界や財務省に残された課題はインボイスの全適用だ。
そして、景気に与える消費税の影響だ。不況のさなかに5%に引き上げた97年以来、日本は経済成長が止まり、賃金も国内消費も冷え込み続けている。
米中貿易摩擦がこじれ、10月にEUでは英国の離脱による混乱が予想されている。大不況すら予測される中、10%は凍結しかない。 |