大幅に農産物を市場開放する日米貿易協定およびデジタル協定が10月7日、正式調印された。協定の承認問題は今国会の大きな争点であり、問題点を徹底追及し、明らかにすることが求められる。
安倍晋三首相は9月25日、合意について、「日米にとってウィンウィン」と吹聴した。
一方、トランプ大統領は「米国の農家、牧場主にとって大勝利」と発言。米国産コメの無関税枠こそ設けなかったが、日本は約72憶ドル(約7800億円)分の米国産農産物の関税を撤廃・削減した。米国産牛肉にはTPPと別枠の特別枠を設け、トウモロコシの大量輸入も約束した。
問題は、食料自給率がカロリーベースで37%に下がった食料安保以上に、国民の健康と生命を脅かす食品の安全の後退だ。
世界で規制や禁止が強まる除草剤グリホサート(代表的な商品はラウンドアップ)を日本は野放し。しかも残留基準を引き上げ、パンやパスタの原料・小麦は6倍の30ppm、そばは0・2ppmを30ppmとした。農民連食品分析センターによれば、「国産小麦」と表示の食パン以外からグリホサートが検出されている。
グリホサートでガンになったとしてモンサントを相手取った訴訟が1万件以上起き、同社に数十億円の賠償金支払いを命じる判決が昨年8月以降、米国で相次いでいる。
国内では神経毒性物質のネオニコチノイド系農薬も放置されている。獨協大学の市川剛医師らの研究グループは7月1日、この農薬が胎児に移行する可能性を示唆する論文を発表している。その上、政府は9月にゲノム編集食品を解禁し、販売に道を開いた。予防原則に立たない安倍政権は、倒すしかない。
「産消連携」の運動を
関西よつ葉連絡会・大阪産地直送センターやストップTPP!緊急行動・関西などが呼びかけた集会が10月6日、大阪市内で開かれ、130人が参加した。講師の鈴木宣弘東大教授は日米貿易協定の農業問題について、次のように講演した。
協定は、日本にとって非常に「片務的」。トランプの選挙対策だけの「つまみ食い」協定だ。日本は自動車のために農業を差し出したが、結局は自動車も守れないことになる。自動車を人質にとられ、国民の命を守る農と食が生贄(いけにえ)にされようとしている。
安心・安全な食料を安定的に国民に供給することは国の責務だ。けれども現実は危機的な状況にある。国の政策を変えることに全力を尽くそう。そして、それ以上に重要なことは、自分たちの力で命とくらしを守る強固なネットワークをつくることだ。
例えば、農協と生協の協業化や合併も選択肢になりうる。自治体を巻き込み生産者と消費者が一体となった、市民主体の「産消連携」運動に取り組もう。 |