1. トップ >週刊新社会
  2. 今週の新社会
  3. 2019.12.3
公立学校の変形労働制
過労死増やす
全労働者に波及の恐れ 
~労働弁護士団が緊急集会開催『給特法』見直しを~

 公立学校の変形労働時間制を導入する給特法改定案は11月22日の参院本会議で審議入りしたが、日本労働弁護団は24日、長時間労働で苦しむ教員を放置し、労働基準法の時間規制を緩和するきっかけとなり、全労働者に波及する恐れがあるとして都内で緊急集会を開いた。

 「求めているのは変形労働時間の導入ではない。給特法(教育職員の給与等に関する特別措置法)の見直しだ」「4月、5月の疲れを夏休みにとれというのも問題だが、9月、10月の疲れも夏休みに取れというのか」「これでは確実に過労死が増える」「公教育の質は絶対に低下する」と集会で訴えたのは、給特法の改正と変形労働時間制撤回を求める署名運動をしてきた公立高校教員の西村祐二さん。

 給特法は教員の残業や休日労働手当を払わない代わりに給与の4%分を「教職調整額」として払うもので71年に制定された。当時、部活動は社会スポーツに移すということだったが、逆に部活動が教育のためから競技のため、勝利至上主義に変質し、土日もない活動となっている。

 事務量も増え、現在は給特法制定の根拠となった残業時間の、小学校で7・5倍、中学校6・3倍となっている。まさに、「定額働かせ放題」という実態がまかり通っている。

 この実態に文科省も「働き方改革」をしようとしたが、残業代に年間9千億円の財源が必要で、教員の定数も増やさざるを得ず、そこで打ち出したのが年間の変形労働時間制。

 「繁忙期」(4、6、10、11月)は1日の労働時間を3時間延長し、「閑散期」の夏休みにその分を5日分の休日として調整させるもので、都道府県や政令市の条例で決めることになっている。

 集会で基調報告した日本労働弁護団事務局長の嶋﨑量(ちから)弁護士は、「学校現場では部活動などを自発性によるものとして労働として扱ってこなかったために、勤務時間管理がおろそかになり長時間労働が放置されてきた」「変形労働時間制は残業代支払いを減らそうとする経営者の目的で使われており、労働時間短縮にはつながらない」「導入には労使協定が前提という労基法を壊す規制緩和」であり、「他の公務員や民間労働者に波及しかねない」と強く警告した。

 集会には『ブラック部活動』などの著書で教育のあり方を提言してきた内田良名古屋大学准教授や教育学部に所属する大学生、全日本教職員組合書記長も参加して報告した。