1. トップ >週刊新社会
  2. 今週の新社会
  3. 2020.08.18
 
広島市 批准求める 
核廃絶へ禁止条約を                    

平和式典で安倍首相「条約」に触れず 

  広島、長崎に原爆が投下されて75年。被爆者と世界の人々の核廃絶の願いをよそに昨年8月、米ロ間の中距離核戦力(INF)全廃条約が米国の離脱によって失効した。直後に米が中距離ミサイルの発射実験を行い、米中の緊張が高まる中、再び核軍拡競争の恐れが高まっている。

 核による人類滅亡までの残り時間を示す「終末時計」は今年1月、過去最悪の「残り100秒」。その緊張を解く鍵の一つはあと6カ国(89日時点)の批准で発効する核兵器禁止条約だ。核兵器の全廃と根絶を目的とする同条約は17年、国連で122カ国・地域の賛成で採択された。

戦争被爆国として

 しかし、核保有国と米国の核の傘に依存する日本政府は条約に反対し、締約国にもなっていない。世界で唯一の戦争被爆国である日本が、核兵器禁止の先頭に立たないことに国内外から失望と怒りの声が上がっている

 6
日の広島市平和記念式典で松井一實市長は、平和宣言の中で安倍晋三首相にNPT(核兵器不拡散条約)と核兵器禁止条約は、ともに核兵器廃絶に不可欠な条約であり、日本政府が核保有国と非核保有国の橋渡し役を果たすためにも、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを誠実に受け止めて締約国になり、唯一の戦争被爆国として、世界の人々が被爆地ヒロシマの心に共感し「連帯」するよう訴えてほしいと要請した。

 しかし、直後に挨拶に立った安倍首相はNPTには言及したが、核兵器禁止条約には一切触れなかった。

 国連で軍縮を担当する中満泉事務次長はこの間、世界を安全にするために核軍縮を進める必要があり、日本政府に参加を呼びかけ続けている。

 中満事務次長はこれ以上核環境を悪化させないために、来年に延期されたNPT再検討会議で核兵器不使用の原則を確認し、核戦争の危険回避のためのあらゆる合意が必要だと強調。来年2月に期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)についても条約維持を前提に、枠組みをどう広げるか話し合うべきだと主張している。

岩手は全自治体で

 国内でも被爆者や平和団体が核兵器禁止条約発効に期待し、地方議会も7月現在、4県議会を含む468自治体議会が、政府に対して核兵器禁止条約への署名や批准など、条約への参加を求める意見書や決議を採択している。中でも岩手県は県議会をはじめ全市町村議会が可決している。

 原爆投下が戦争を早く終わらせたと広く刷り込まれている米国でも、7月に行ったNHKの「平和に関する意識調査」では若者の70%余(日本は85%)が「核兵器は必要ない」と答えている。日本世論調査会の7月の世論調査でも、核兵器禁止条約に参加すべきと答えた回答は72%にのぼっている。

コロナ対策に回せば

 核兵器予算を新型コロナ対策に回すと何ができるかと発信しているのは、17年にノーベル平和賞を受賞した核廃絶キャンペーン「ICAN(アイキャン)」だ。川崎哲国際運営委員は、米英仏の核兵器予算や日本の武器購入予算を医療に使えば新型コロナ対策が進むと発表している(表)

 政府の役割が国民の生命を守ることなら核兵器や軍事力に税金を使うのではなく、韓国がF35などの購入費を削って新型コロナ対策支援に回したように政策転換すべきだ。

 武力ではなく、市民交流や経済・外交で友好協力関係を追求し、東アジアに核のない平和な社会をつくる。それが平和憲法を持つ被爆国・日本が世界から尊敬される道だ。