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  3. 2020.10.13
 
学問の自由に介入
学術会議6人の任命拒否
  
菅首相 強権あらわ                

 菅義偉首相は自民党総裁選中の9月13日、テレビの報道番組で政権の決めた政策の方向性に反対する官僚は「異動してもらう」と明言。その強権姿勢が、政府から独立した日本学術会議の会員任命で表画化した。3年ごとの半数改選による105名の推薦者のうち、これまで特定秘密保護法や戦争法などで政府を批判した学者6人の任命を外したのだ。

生活が危機 国会を開け

 法律で首相は任命権者ではあるが選任権はなく、過去の国会答弁もそれを裏付ける。政府の意に反する言動を行う学者を排除するとなれば、学問の自由に対する介入であり、学術会議の独立性を侵す。任命しなかった理由も説明せず、国民に対する独裁宣言も同然だ。

 他方、憲法53条に基づく臨時国会の開会要求には前政権同様応じず、10月下旬、26日の開会を表明している。

 新型コロナ感染による解雇が9月23日には6万人を超え、9月に入ってそれまでの1・5倍のペース。その背景には業績悪化に耐えられない企業の休廃業がある。東京商エリサーチの9月23日発表では、今年1~8月の休廃業・解散企業数は前年同期比23.9%増の3万5816件(速報値)に上る。

 新型コロナ感染対策の中核となる病院経営も患者数の減少などで、6月時点で7割の病院が赤字、夏の賞与も27%の病院が減額支給、1%弱が不支給だった。それにもかかわらず、政府の1次、2次補正で予算化された医療機関への交付は多くの場合、9月下旬からというのが厚労省の調査で明らかになっている。

 国民生活にはひたひたと危機が迫っているのに、日本は新型コロナ感染の死亡率は低いと高をくくり、経済再生に政策転換しようとする政府の姿勢は許されない。

 菅政権には国民、市民の声は届かない。その声を届けて的確な政策を推進するのが国会の役割。それを開こうともせず、新首相の所信表明すら先延ばしにしているのは主権者無視も甚だしい。これでは代議制民主主義は機能しない。

 政権にすり寄るマスメディアに期待はできない。野党も菅内閣の支持率の高さに惑わされず、総選挙の準備を進めるとともに、臨時国会開会を求める運動を強めなければ、国民の政治不信が広がるだけだ。