ブルネイで行われていたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉(参加12カ国)は8月31日、「年内交渉妥結」とAPEC(環太平洋協力会議)首脳会議(10月)で「年内大筋合意」の最終確認を行うとの声明を発表して終了した。
今回の交渉は、市場アクセス(関税撤廃問題)や知的財産分野、投資、競争、金融サービス、原産地規則などに焦点を当てて行われた。ブルネイでの交渉は終わったが、水面下では各国の利害をかけた最終的な激しい駆引きが続いている。
米に付き合う日本
日本政府は、「TPPは壊国の道であり、即時脱退すべきだ」という国民の大きな声や自民党内の反対派を押え込み「重要5品目〔米、麦、肉=牛・豚、乳製品、甘味資源〕の関税撤廃例外扱いに全力を挙げる」と交渉に臨んだようだ。
しかし、交渉はあくまで米国主導であり、日本はお付合させられているように見える。
重要5品目についての交渉どころか、肝心の交渉相手である米や豪は、国内調整や9月総選挙とやらで2国間交渉は9月以降に先送りされ、日本の自由化率(総生産品目の中で関税撤廃できる品目数)80%を提案(オファー)するにとどまった。なお、日本の自由化率の現状は84%〜88%であり、TPPは95%〜100%を目指している。
決定権握るのは米
一方、来年秋の中間選挙を抱えている米国は、「TTPはオバマ大統領の最優先課題」と位置づけ、年内決着に全力を挙げている。その狙いは、年内決着で日本に譲歩させ、その成果を来年秋の中間選挙での民主党勝利に結び付けたいからである。
USTR・米通商代表部のフロマン代表は8月19日に来日した際、甘利TPP担当相と会談して、「年内合意」を引き出し、TPP閣僚会義(8月22日)でも甘利TPP担当相に「交渉促進、年内妥結」を提起させる成果を上げた。
さらに、「年内大筋合意」を確認するAPEC首脳会議(10月8日)でも、安倍首相が同様の発言をすることは間違いないといわれる。交渉は、完全に米国主導なのである。
「重要5品目を死守し、国益を守る」という勇ましい言葉とは裏腹に、日本は完全に米国のサポーターになっている。交渉の決定権を米国が握っているのが、TPPの実態だ。そのことは、ブルネイで開かれたのに閣僚会議の議長を米国が務め、米国がTPP首脳会議を10月開催と決定したことを見ても明らかだ。
4年も秘密扱いに
こうした米国の交渉戦略を許しているのが、NGOやNPOのロビー活動を締め出す「守秘契約」である。
「守秘契約」は交渉の内容を交渉委員以外に絶対に見せない、漏らさない、知らせない上に、関係者の同意がなければ協定後4年間は秘密扱いが可能という徹底したものだ。