師走に2015年度の税制改正大綱と緊急経済対策が閣議決定された。両者に共通しているのは、大企業・金持ち優先で、社会的弱者には、「ちょっぴりばら撒いてやるから有難く思え」という権力者の露骨かつ傲慢な姿勢である。
税制大綱は、贈与税の非課税枠の拡大と法人税減税の二本柱になっている。
贈与税は、@13年度導入された「孫への贈与」(教育資金)延長A結婚、出産、子育てに非課税枠の新設B住宅資金用の特別枠の拡大で全て1000万円単位である。社会を退く世代が溜め込んだ資産を物入りな現役世代に移転し、消費拡大を狙うというが、資産のある豊かな家族の問題であって、それ以外の家族との格差は固定される。
弱者は消え去れ
そして、極めつけは子ども版「ジュニアNISA」の新設だ。株投資利益の非課税枠(「少額投資非課税制度NISA」)の拡大だけでなく、0~19歳の子どもや孫の名義で年80万円の運用益は非課税にするという。
法人税は、国際競争力を高めるため、企業利益にかかる国税は15年度2・51% 16年度3・29%下げ、一方、赤字企業にもかかる外形標準課税の強化で穴埋めするという。
今、円安で自動車など輸出型製造業と、原材料や消費財など高い輸入品に頼っている企業の明暗が分かれているが、強いものはより強く、弱いものは消え去れという構造だ。それが雇用劣化に結びついている。アベノミクスの矛盾がいよいよ明らかだ。
一方、3・5兆円にのぼる緊急経済対策である。地域振興のために、旅行券や商品券、灯油購入を補助する「消費喚起型交付金(1回だけのバラマキ)」、人口減を防ぐ地方創生・活性化の交付金などの政策が並んでいる。東京圏から地方の転出4万人増・転入6万人減、地方の若者雇用30万人創出、農林水産業就業支援など耳触りはよいが、具体策はない。ただ、地元就職すれば奨学金返済減免のための基金作りぐらいだ。
しかし、子どもの貧困が叫ばれている時、将来世代につけを回さないためには、北欧並みの教育に対する支援が必要なのだ。1回限りの緊急対策ではなく、切り捨てられる医療・福祉・教育など、「公共」部門の充実のための、税・財政の改革こそ問われている。
「強い企業」がより強くなれば、中小企業にも、賃金にも波及し、税収も伸びるというトリクルダウンは破綻し、格差を拡大している。
4月選挙で反撃
問われているのは、儲けている企業や資産への累進課税の強化や株や譲渡所得など不労所得への課税強化で財源を作り、格差を縮小する「再分配」機能の強化だ。医療・福祉・教育など「公共」に資金を回せば雇用も生まれる。「公共」「労働」を地方、地域から取り戻すために4月の統一自治体選は反撃の第一歩である。
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