政府、労働界、財界の代表による師走の「政労使会議」で「経済界は賃金引き上げに向けた最大限の努力をはかる」ことで合意した。安倍政権の意向を踏まえたもので2年連続。「官製春闘」を許せば、14春闘の二の舞になる。
アベノミクスの「企業や富裕層を富ませ、その滴(しずく)を下層に浸透させる」トリクルダウンは幻想だった。
7月〜9月期GDP悪化(1・9%減)に比べ、全産業の同時期経常利益は前年同期比7・6%増になっていることが明らかになり、アベノミクスは企業だけに利益を、労働者には滴の一滴も与えないことを露呈した。
賃上げを闘いとるべき春闘の、「政労使会議」に取って代わられた。政・財の狙いは、経済の好循環実現に向けて主導権を握り、春闘を形骸化させることにある。政治の介入を許せば、春闘そのもの、労働運動すら消滅しかねない。
年功賃金見直し9月に開かれた今年度最初の政労使会議は、年功賃金見直しを主題にした。生産性基準原理に基づく成果主義の全面展開を図ろうというのだ。安倍政権は労働組合の影響力を徹底的に封じ、春闘を仕切ろうと策す。
企業は、@人件費のコストを下げるA税金を納めないBいつでも解雇・いつでも雇用の3点を追求、企業価値を高めることに専念する。
ところが、GDPは4月〜6月期に引き続き、7月〜9月期もマイナス成長(年率換算で9%減)となり、「大企業の富は中小企業に回らない」「個人消費の低迷は賃上げが物価高に追いつかない」という不満が広がり、政府は方針転換した。
それが、12月12日の「政府の環境整備の取組みの下、経済界は賃金引上げに向けた最大限の努力を図る」という政労使会議の合意だ。これを境に、産別の賃上げ要求は政財の想定する2%のベア要求に統一された。
経団連は12月26日、2014年1月〜6月実施分の昇給、ベースアップをした企業のみ224社を抽出、「100%実施された」と、いいとこ取りの調査結果を発表した。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざす安倍政権は、消費税を引き上げても、法人税は引き下げる。実効税率を3・29%引き下げる方針を決めた。気をよくした経団連の榊原会長は新年挨拶で「ベースアップも一つの選択肢。対応できる企業は前向きに検討する」とコメントした。だが、ベア実施が可能な企業は一握りでしかない。
組合員の期待に
組合員は要求と闘い方、配分まで責任ある指導を求めている。個別交渉、交渉重視は、職場を沈黙させ、産別労働運動を消沈させる。労働組合は闘う組合員を守り、要求に応え、産別は職場闘争の後押しと闘いの責任を持つ、その実践こそが労働者が期待するものだ。人間らしく生活できる大幅賃上げを獲得しよう。
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