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2015.02.24
人質殺害事件
「対テロ」安倍外交の誤りを問う




 「イスラム国」が湯川遥菜さん、後藤健二さんを殺害した。「国民の生命、自由、幸福追求権」を掲げ海外で戦争する国づくりをめざす安倍内閣は、この間、何をしたのか。貴重な人命が失われた事件と政府の対応には厳しい検証が必要だ。


 湯川さん、次いで後藤さんが拉致されたのは昨年後半。その後、イスラム国側の目立った動きはなかったが、安倍首相が中東で「イスラム国の脅威に対抗」と表明して急変した。


 イスラム国の台頭


 イスラム国は、アサド政権の進退をかけたシリアの内戦で登場した。続行中の内戦で反政府派は、欧米などが支援する自由シリア軍、アルカーイダ系のヌスラ戦線、そこから分離したとされるイスラム国の四つ巴だ。
 ところがイスラム国は昨年、「国境は西欧が勝手に引いたもの」としてイラクにも進出。イラク戦争後のイラクの「監督」米国は、イスラム国がイラク政府軍を圧倒し、油田地帯に支配を広げるに及び、「重大な脅威」と軍事的重点をイスラム国に移し、空爆を繰り返している。
 イスラム国の伸長は、シーア派主導のイラク政府に抑圧されてきたスンニ派、特に旧政府軍関係者が合流したためともされ、欧米やアジアからも社会的に差別されている若者たちが戦士として多数参加しているという。異教徒の殺害や奴隷化という過激なイスラム国は、大国の戦争政策や、格差・差別社会の“鬼子”とも言える。武力で平和はつくれない、もう一つの典型だ。


 有志国連合に参加


 対して米国を中心にNATO諸国や中東諸国などは「反テロ」を旗印に「有志国連合」を形成、@空爆、A国境管理、B資金流入阻止、C難民支援やインフラ整備などの戦略で対抗している。
 1月に中東を歴訪した安倍首相は、まさにCを分担することで有志連合の一員であることを誇示。エジプトで「イスラム国と戦う周辺各国に2億ドルの支援」を約束、パレスチナへの占領と攻撃をやめないイスラエルとは安保協力を確認。
 イスラム国はこれを捉え、人質交換要求と殺害という脅迫に出た。虚を衝かれた安倍政権は、なす術を持たず「緊張感を持って全力で」と繰り返しただけだ。「中東には一千万人の難民がおり、日本の支援は人道的なもの」と弁解するが、その大部分はパレスチナやアフガニスタン、シリアなどの難民で説明も矛盾。


 居直りを許さない


 首相は、政府対応も「秘密」と報告を拒否、「邦人救出に自衛隊を」「イスラム国も集団的自衛権行使の対象に」と強がる。だが、米国の覇権戦略に沿わず、人道支援に徹することこそ、戦乱と生活苦にあえぐ人びとの信頼を得る道だ。この道を捨てれば、暴力と憎しみの連鎖が続くだけだ。三百代言と悲劇の悪用を許してはならない。



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