18歳から選挙権を行使できるようにする公職選挙法改定案が議員立法で衆院に提出されている。今国会での成立は確実な情勢で、早ければ来年夏の参院選から適用し、約240万人が新たに有権者となるというが、多くの問題がある。
改定法案を提出したのは共産、社民両党を除く6党だが、社民党も「憲法改正に絡むという議論があったが、18歳への引下げはもともと賛成」とし、共産党は「国会審議を通じて判断する」という。
世論調査でも賛成48%、反対39%(朝日新聞3月7日付)だ。日本国憲法は「成年者による普通選挙」を保障する。日本社会は何歳を「成年」とするのか、身近で深いテーマである。国・社会のあり様が大きく変わるだけに熟議が必要だ。
若者の政治参加
選挙年齢の引下げは70年ぶりとなるが、国会議員を選ぶ選挙ばかりでない。地方自治体の首長や議会の選挙、最高裁判事の国民審査、自治体のリコール等の住民投票にも関わる。先にスコットランド独立の是非を問うた住民投票では、16歳以上が投票した。日本でも今年2月、沖縄の与那国町で陸上自衛隊の部隊配置を巡る住民投票は「中学生以上」が投票資格であった。
国際的にみても選挙年齢の下限を18歳としている国は167カ国に上り、若者の政治参加と国政への関心を高めることにつながると言われている。
だが、今回の改定案は、昨年成立した憲法改定国民投票法の「18歳投票権」と連動しており、改憲勢力の強い意思が働いていることを見逃すことはできない。また、ベトナム戦争時の米国で「徴兵されるのに選挙権がないのはおかしい」という議論が起き、投票年齢が18歳に引き下げられた歴史があるが、選挙年齢は徴兵制と絡んできたことも事実だ。
もし、18歳に引き下げるのであれば、国民主権や基本的人権の尊重、平和主義を定める憲法の理解が深められなければならないが、その保障はどこにもない。
逆に、自民党の若手は授業内容が高校生の投票行動に影響する可能性があるとして教育公務員特例法を改定し、教員が「違法な政治活動」をした場合の罰則規定を盛り込むことを目論む。18歳選挙権の導入が国による教育の押し付けに拍車をかけ、戦争ができる国になるために青少年の動員を教育から準備しようという魂胆が透けている。
何歳から大人か
一方で、民法や少年法の成人年齢も議論に上っている。成年年齢が変わると法律191、政令40、省令77を改定する必要があるという。朝日新聞の世論調査で民法の成人年齢の引下げに賛成43%、反対44%、少年法については賛成81%、反対11%という驚くべき数字もある。
「18歳」を巡る議論は、社会の在り方の本質的な問題を含むことに留意し、慎重な上にも慎重でなければならない。
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