戦争法案の審議が進んでいるが、一方で「裏の戦争法案」とも言うべき刑事法制改悪法案も衆院法務委で進行している。犯罪捜査対象の2%の可視化や盗聴法の大改悪、冤罪の温床となる司法取引の導入などが一本で提出されている法案だ。
裏切られた期待
刑訴法改悪案は、法制審の「新時代の刑事司法特別部会」の答申による。部会は、布川、足利、志布志、袴田など一連の冤罪事件の構造的な誤りを正し、冤罪のない社会をつくることが期待された。しかし、期待は見事に裏切られた。
冤罪の根源は違法捜査にある。捜査の構造の問題であり、そこにメスを入れなければならない。捜査当局がやってきたことが憲法に照らして正しいかどうかを含めて検討しなくてはならなかった。
ところが、憲法が保障する人身の自由は全く議論されなかった。取調べの時に弁護士が立ち会う、黙秘権が完全に保障される、何時間でも取り調べられる実態をなくし、被疑者・被告人を人間として扱うように変えるのが「新時代」を標榜する特別部会の役割だったはずだ。
可視化(録音・録画)は今の取調べを前提とし、違法捜査の構造を変えるものではない。そして、2%の裁判員裁判対象事件、で実現したに過ぎない。日弁連はわずか2%で治安の強化と警察権限の拡大、国民の管理統制に繋がる改悪に道を開いてしまった。
焼け太った警察
盗聴の拡大や司法取引の導入は警察権限の拡大だ。今回の刑事司法改革は冤罪で警察や検察が問題になっていて、国民の目がそこに向いていたのだから、チャンスだった。ところが、それを逆手に取って警察権限の拡大に使われた。権力は転んでもただでは起きない。
今回の「改革」は捜査当局の焼け太りといわれるが、特別部会の委員を務めた警察庁の官僚が、「録音・録画では少し譲ったが、司法取引や盗聴で大事なことを取ったから警察として満足できる」と言ったというが、その言葉が象徴的だ。
日本の警察は警備公安に本質があり、治安のために情報収集など様々な活動をする。よく知られるのが緒方靖夫共産党国際部長(当時)宅盗聴事件である。
盗聴法の大改悪に見られるように、今回の法案が可視化といった狭い範囲の問題ではなく、治安基盤の強化のために出てきたことははっきりしている。治安強化の立場を鮮明にして作られている。
反戦争法の柱に
戦争ができる・戦争する国作りとなったら、いざという時に、戦争に反対する国民や文句を言う国民がいては困る。国内の治安を統一して積極的に戦争に協力する体制を作らなくてはならない。戦争法案と一体のものとして法案ができていることをはっきりさせることが、緊急の課題だ。戦争法制に反対する運動のとして広げなくてはならない。
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