安倍晋三首相は5月20日開かれた党首討論で、「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」と述べた。敗戦後の日本の基本的な方向を決めた「宣言」を「読んでいない」と真顔で答えた安倍氏に首相の資格はないと言わざるをえない。
第二次大戦で日本を無条件降伏させ、アジア太平洋戦争終止符を打ったのがポツダム宣言だ。伊、独は降伏したが、連合軍の降伏勧告を受け入れず、最後まで戦争を継続しようとした日本に対し、米国による広島、長崎の原爆投下を経て、圧倒的な力を背景に無条件降伏を受け入れさせたのがポツダム宣言だ。
軍国主義の一掃
「宣言」は、1945年7月にベルリン郊外のポツダムに米英ソ3国の首脳が集まり、対日降伏勧告と戦後処理を内容とする13項目で作成された。宣言はまず戦争継続に固執する戦争指導部に対する日本国土の徹底殲滅を表明する。
次に降伏は無条件とし、「新秩序が確立」され「戦争能力が失われた」と確認できるまでは連合軍(米国)が日本を占領するとした。また日本の領土については、「日本国の主権は本州、北海道、九州、及び四国」とし、それ以外の諸島は連合国が決めるとした。ちなみに、これにより沖縄は日本と切り離され、米軍施政下となった。
さらに日本の軍国主義を一掃するための施策として戦争犯罪人の処罰、賠償の義務とともに、民主化のために言論、宗教、思想の自由と基本的人権の尊重などを記している。
ポツダム宣言を受諾し無条件降伏した日本は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって民主化政策が進められた。その主なものは、極東軍事裁判、憲法制定、財閥解体、新教育制度、婦人参政権、農地改革などで、現在の日本社会の基本的構造が形づくられたのである。
こうしたなか、戦後世界はソ連をはじめとする社会主義圏と資本主義圏が対立する冷戦構造が生じ、米国は日本の非戦・非武装化の修正を始めた。その契機が朝鮮戦争であり、自衛隊の前身となる「警察予備隊」の発足だ。米国は日本の民主化を進めると同時に共産主義の「防波堤」と位置付けた。
1951年9月には、サンフランシスコ講和条約とともに日米安保条約(旧安保)が結ばれ、今日に至っている。
戦争ができる国
安倍首相はポツダム宣言を「つまびらかに読んだことはない」にもかかわらず、「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」と大言壮語し、「侵略戦争の定義」に異議を唱え、「自虐史観」を声高に叫んで、歴史の修正を狙っている。
その延長線上で「戦争ができる国」へ戦争参加法制定、憲法九条の改悪を狙う。とんでもない首相と言うほかはない。無知と暴走の安倍首相を、安全保障関連法(戦争参加法)とともに葬り去らなくてはならない。
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