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2015.06.16
GPS捜査野放し
早急に立法して規制すべき



 令状なしに捜査対象の車に衛星利用測位システム(GPS)の端末を密かに取り付ける捜査について、裁判所の判決が違法、合法と分かれ、総務省は個人情報保護の指針を緩めてGPS情報を警察が利用しやすくする方向だ。何が問題なのか。
 

  GPS捜査を巡る裁判所の判断は、今年1月が適法、6月が違法で、いずれも大阪地裁の判決だ。
 GPS捜査は警察庁が2006年に内規で基準を定め、各地の警察が運用してきたが、「プライバシー侵害は大きくなかった」と適法とした1月の大阪地裁判決が司法として初めての判断という。6月の大阪地裁判決は、「令状主義を軽視し、プライバシーを侵害する重大な違法捜査」という内容だ。


 「公私二分論」で


 令状なしのGPS捜査の何が問題か、プライバシー権をなぜ侵害するか考えたい。GPS捜査を正当化する最大の根拠は、公道上の移動を把握しているのでプライバシー問題はそれほど大きくないというもので、家の中や敷地内でプライバシーは保護され、公共空間では保護の程度は低いという「公私二分論」に由来すると見られる。だが、GPS捜査は「公私二分論」では判断できない問題がある。
 第一は、GPS捜査が発信装置のバッテリーさえ交換できれば無制限に24時間365日でき、尾行や目視では不可能な監視装置ということだ。そして、車両が問題ないならバッグなど所持品や携帯へと範囲は広がり、警察はGPS捜査したい放題の社会になる恐れがある。
 第二は、GPSのデータは公共空間だけでなく、私的空間に居る場合も把握され、その人の趣味や志向、思想信条や交友関係などのデータを収集することを可能にすることだ。
 第三は、GPSデータの利用問題だ。捜査機関の判断だけで期間や対象についてどのようにでも利用できるとしたら、法的規制は及ばないということになる。
 ドイツではGPS捜査は認められているが、事後的な告知を義務づけている。しかも、対象は「テロ犯」のように社会の安全に深刻な影響を及ぼす事件に限られる。アメリカでも認められているが、最高裁判例によって、令状の事前取得を義務づけている。
 GPSを利用した捜査手法は非常に有効であるだけに、プライバシー侵害の度合いも非常に高くなる。従って、GPS情報の捜査利用に法的な規制がなくてはならず、立法府が早急に対応すべきだ。


 令状主義が原則


 憲法とも絡む捜査手法が、総務省の指針や警察の内規で運用される現状は極めて問題がある。日本では逮捕や捜索など捜査機関の強制手続きには、「令状主義」がとられている。権力の乱用を防ぐため、裁判官が事前に出した令状に基づくという原則だ。通信傍受(盗聴)も令状がいるが、GPS端末設置は必要とされていない。野放しは許されない。



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