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2015.07.28
強まる「帰還」圧力
被害者分断は許されない
 

 東京電力福島原発事故で故郷を追われ、帰還できない人は発生から4年を超えてなお11万人に上る。国や東電の責任を問う裁判は全国20地裁で25件、原告は1万人を超える。原発事故被害者を翻弄する許せない事態がまたも起きている。
 

 自民党は去る5月、@居住制限区域と避難指示解除準備区域(約5万6千人)への避難指示解除を17年3月までに行う、A両地域の住民(避難中)への月10万円の慰謝料を18年3月に打ち切るよう、政府に求める方針を決めた。
 また、福島県は「自主」避難者(約3万人)の借上げ住宅家賃負担を17年3月末で打ち切る方向で検討している。自民党と福島県の方向は、避難者の事情を全く考慮しない一方的なものであり、住民の分断を狙った狡猾な意図が透けている。


 根拠ない「安全」


 まず避難指示の解除は、現地の実態・実情によって可能になるものであり、政府や東電が決めることではないことを明確にしておかなくてはならない。全てを奪われた避難者は、放射能と向き合いながら不安を抱えて生活している。科学的根拠も示されず、「安全、安全」の宣伝だけで帰還を半ば強制されてきた。
 事故から4年が過ぎても、放射能で最も危険とされるセシウム137(半減期30年)が残っている。避難者は口々に「除染しても線量は下がっていない」と言っているし、上がっている所さえある。
 自民党は何を根拠に「17年3月で安全になる」というのだろうか。被曝に「これで安全という値」はない。低線量被曝による被害・影響には分からないことがたくさんある。これなら安全という科学的な根拠が示されない限り安心できないのである。 


 はした金の賠償で


 次に、18年3月に賠償を一律に打ち切る方針には住民分断の意図がある。
 避難解除後わずか1年で慰謝料を打ち切る従来の国・東電の方針に、解除準備に入った地域から強い不満が出ていた。兵糧を断って帰還を強制するようなものだからだ。
 そして、強制をなだめるように、今年解除しても18年3月までは慰謝料は延長するという。しかし、17年3月以降の解除を想定する地域は、1年未満で打ち切られる。
 自動車事故と同じ10万円の賠償で、一家離散、故郷喪失、失業の苦しみに突き落とされ、原発関連死が今なお増え続け、3月で1232人という実態をどう償うのか。はした金の賠償で、そのうえ住民分断の姿勢を許せるわけがない。


  被害者はみな同じ


  福島県は3万人にのぼる「自主」避難者の借上げ家賃負担の延長を17年3月までとするよう市町村に打診したという『福島民友』(5月22日付)。原発事故により被害者に「指示」も「自主」もないことは明らかだ。勝手な線引きで賠償が異なることがあってはならない。



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