ヒロシマ・ナガサキは70年目の原爆の日を迎える。ヒバクシャの核兵器廃絶の願いは未だ実現せず、今年に入ってプーチン露大統領のクリミヤ併合に伴う「核兵器使用準備」発言やNPT会議決裂など、歴史の歯車が逆回りしている。
終末時計は3分前
核戦争などによる人類の滅亡(終末)を午前零時になぞらえ、その終末までの残り時間を象徴的に示す「世界終末時計」の針は今、23時57分を指し、人類は終末まで3分という危険な状態にある。
日本への原爆投下から2年後に米国の科学雑誌『原始六科学者会報』の絵表紙として誕生した終末時計は、今日では気候変動による環境破壊なども考慮して針の動きを決めており、今年の3分前は「気候変動や核軍備競争のため」という。
ソ連が最初の水爆実験を行った53年は「2分前」、冷戦崩壊の90年は17分に伸びた。日本への原爆投下で核軍拡競争始めた米ソ両国は、核戦争の瀬戸際に陥った62年のキューバ危機によって、63年には部分的核実験禁止条約に調印、82年には戦略兵器削減条約の交渉を開始、冷戦終結で核軍縮の流れは急加速した。
多いときは米ロ(ソ連)合わせて6万発を超えた核弾頭の保有数は未配備や解体待ち分を含めて1万5000発と推計されまでに減った。だが、核戦略は依然として冷戦思考に基づき、それが「終末まで3分」の原因となっている。
ロシアは一方的なクリミヤ編入の際、NATO諸国との対決に備えて核兵器使用を準備したことをプーチン露大統領が明らかにしたが、それこそ冷戦思考そのものであり、現在の核情況を端的に示しているだろう。
そして5月下旬、核拡散防止条約(NPT)再検討会議は1ヵ月近い議論を重ねながら、事実上の核保有国であるイスラエルを念頭に置いた「中東非核地帯」に関する国際会議の開催を盛り込んだ最終文書案に米国などが反対して決裂した。
会議で、日本政府が核保有国と非核保有国の間に立って、被爆国として核兵器廃絶に向けた役割を果たしえなかったことは極めて遺憾だ。米国の核の傘への依存を優先する安倍内閣の後ろ向きの姿勢は、厳しく糾弾されなくてはならない。
手帳保持者80歳超
こうした状況のなか、被爆者健康手帳保持者の平均年齢は今年3月末時点で80歳を越えた。被爆者が肉声で体験を語り、核廃絶を訴える時間は残り少なくなってきた。ヒロシマ・ナガサキでは「継承」の努力が続けられているが、急がなくてはならない。
そして、今年の原水爆禁止世界大会のメーンスローガンは「核も戦争もない平和な21世紀に!くり返すな原発震災!めざそう!脱原発社会」だ。森滝市郎さんの「核エネルギーと人類は共存できない」という言葉を心に刻み、困難を乗り越え核廃絶へ前進しなくてはならない。
|