共通番号(マイナンバー)制度は来月から番号通知カードが配布され、来年1月から実施されるが、その前にその利用を拡大する法案が今国会で成立することになった。戦争法の成立強行へ暴走する安倍内閣は番号制度でも暴走している。
政府は、共通番号を「マイナンバー」と呼び、「より確実な徴税が実現し、年金などの支給手続きが簡略化できる」と強調し、その利用を2018年から銀行の預金口座にも適用する改定法案を今国会に提出した。
法案には「メタボ検診」や予防接種の記録も結び付けることで、転職先の健康保険組合や転居先の自治体にスムーズに引き継げるようにするという内容も盛り込まれている。
年金情報が流出
衆議院は5月21日の本会議で共通番号法と個人情報保護法の両改定案を自民、民主、公明の各党の賛成多数で可決し、参議院に送った。ところが6月1日、125万人分の年金情報が標的型攻撃によって日本年金機構から流出したことが明らかになった。
年金情報流出事件によって参院での共通番号改定案の審議は中断し、滞ったが、事件は番号制度の危険な本質を白日の下にさらし、国民の疑念・怒りを膨らませた。こうした事態に政府は、「マイナンバーは年金システムと違って安全」と宣伝するだけで年金データ流出事件に関する検証報告書を顧みることなく、改定案の成立を急いだ。
そのため政府・与党は、日本年金機構が特定個人情報を扱う時期を先延ばしする、つまり個人番号と年金を結び付ける時期を遅らせるという民主党の修正案を受け入れ、参院で可決した。参院での修正によって改定案は再び衆院に送られて審議・可決・成立という経過をたどった。
拡大路線へ暴走
共通番号制度は、住民票のある全ての日本人と外国人に生涯変わらない12桁の番号を付け、国がコンピューターで管理するもので、個人情報が全国2カ所の中間サーバーに集積される。政府は2カ所の管理を「分散管理」といってはばからないが、ここが攻撃されたら情報が根こそぎ流出する危険があり、被害の規模と深刻さは年金データの比ではない。
国民総背番号制の韓国では昨年1月、クレジットカード会社や銀行口座関連の個人情報1億400万件が流出して大混乱し、任意加盟の「社会保障番号」が導入されている米国ではなりすまし犯罪が激増しているという。そうした例があるにもかかわらず政府は、マイナンバー活用新法を来年の通常国会に提出し、税・社会保障の枠を突破して戸籍、保検証、医療など拡大路線に突き進もうとしている。
危険な暴走を許さず、自分の情報は自分で管理する権利を守るために10月番号通知・来年1月運用開始を止めさせなくてはならない。そのため来月3日には東京で集会・デモも計画されている。
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