財務省は16年度予算の概算要求を8月31日締め切ったが、一般会計の総額は過去最高の102兆円台に達した。中でも軍事費は第二次安倍政権発足で3年連続増額されてきたが、来年度の要求は過去最大の5兆911億円となっている。
「5兆911億円、語呂合わせをいたしますとゴクジュウイツ(極充溢)となりますが、 内実共に充実したものにしなければ」と中谷元防衛相から語呂合わせも飛び出した概算要求は、今年度予算の2・2%増だ。
戦争法成立前提に
来年度も中国を念頭に離島防衛の強化を前面に打ち出し、新型輸送機オスプレイ12機(1321億円)を購入し、全17機体制を整える。離島奪還やゲリラ戦に対処する機動戦闘車36両に341億円を初めて盛り込んだ。機動戦闘車は航空機で輸送でき、時速100キロで走行、戦車並みの100ミリ砲を備える。
機動戦闘車は離島での有事に即応するため全国15の陸自師団・旅団の7カ所を23年度末までに機動師団・機動旅団に改変するが、来年度は第8旅団(熊本市)と第14旅団(香川県善通寺市)を改変し、機動戦闘車を配備する。
機動師団や機動旅団、機動戦闘車などを輸送するため次期輸送機C2を1機盛り込んだ。航続距離6500キロのC2は最大積載量30トンで、現行C1(8トン)のいずれも4倍超の能力がある。
さらに戦争法案が成立すれば大幅に広がる自衛隊の新たな任務でCEC(共同交戦能力)というアメリカ軍との連携を強化した新型の戦闘システムを搭載するイージス艦1隻の建造に1675億円を計上したほか、戦闘機などの航続距離を伸ばす新型の空中給油機や、路上の仕掛け爆弾などへの対策として紛争地で活用される輸送防護車なども調達する。
すでに5兆円突破
厳しい財政状況から軍事費は02年度の4兆9560億円をピークに12年度までの10年間減少し、2000億円ほど減った。
ところが、12年度末に発足した第二次安倍内閣が「安全保障環境の変化」を口実に軍拡路線に転換、13年度は前年度比0・8%増の4兆7538億円、14年度は同2・8%増の4兆8848億円、15年度は同2%増の4兆9801億円。
そして、2年連続5兆円を突破した来年度概算要求によって防衛省は当初予算で初の「5兆円超え」も視野に入れている。しかし、14年度補正予算で2000億円計上され、当初予算と合わせればすでに5兆円を突破しているのである。
安倍首相らは「安保法案が成立すれば抑止力が高まる」と念仏のように唱えるが、軍事力の裏打ちを前提とした抑止力であることは言うまでもない。そうであるなら戦争法案の「仮想敵」である中国との際限ない軍拡競争にならざるをえない。そんな国にしてはならないのだ。
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