『毎日新聞』9月28日付朝刊は、1面トップで「憲法解釈変更 法制局1日で審査 過程 公文書残さず」と衝撃的事実をスクープで伝えた。集団的自衛権行使容認へ決定的な役割りを演じた内閣法制局は、公文書管理法も無視したのだ。
「憲法の番人」として、憲法をはじめとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を保つこと(横畠祐介内閣法制局長官)を自らの仕事を任じる内閣法制局が、歴代内閣とともに40年間も維持してきた「集団的自衛権の行使は憲法違反」とする見解を変更する重大な決定の経過が公式文書として記録・保管していないという。深刻な事態と言わざるを得ない。
毎日の記事によれば、安倍内閣が昨年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権行使容認」の憲法解釈の変更について、内閣法制局は前日に案文をもらい、翌日電話で「意見はない」と回答、残しているのは「安保法制懇」など外部の人でも入手可能な資料のみで、毎日の記者の取材に対して総務課長は「必要に応じて記録を残す場合もあれば、ない場合もある。今回は必要なかったということ。意図的に記録しなかったわけではない」と答えたという。
国が健忘症に陥る
法制局の集団的自衛権を巡る一連の経過が明らかになるとネット上でも議論を呼び、ツイッタ―上で「先進国といわれる国の出来事とは思えない」「記録がないと国が健忘症に陥ってしまう」などとつぶやかれたという。
「国が健忘症に陥らないため」に、つまり公的文書によって時代の検証が可能になるように2011年4月1日に施行された「公文書管理法」がある。その第1条(法律の目的)で「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と公文書を位置付け、「主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定める」としている。
そして4条は、目的達成のために行政機関は「経緯も含めた意思決定に至る過程並びに行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう…文書を作成しなければならない」と、法令の制定や改廃など具体的事項を列記して文書作成を義務付ける。
ところが、である。公文書管理法の制定に当っては、内閣法制局は当然のこととして法案審査に当り、関与しているにもかかわらず、憲法解釈変更の議事録を作成せず、回答も文書ではなく、「電話で行った」というのだから、まさに異常と言わざるを得ない。
3つの法律の関係
集団的自衛権容認の閣議決定を巡る一連の内閣法制局の動きは、安倍内閣の体質を凝縮している。情報公開法、公文書管理法、特定秘密保護法の3つの法律を巡る問題は、国民の知る権利と民主主義・立憲主義に根本的に関っている。
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