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2015.12.01
「緊急事態条項」発言
9条改憲の突破口を目論む
 

 安倍首相は衆、参予算委員会の閉会中審査(11月10日、11日)で「緊急事態条項」を盛り込んだ改憲の意欲を表明した。この条項は9条改憲に向けた突破口であり、権力が総理大臣に集中し、国民の諸権利を大幅に制限する危険なものだ。


 「国家の緊急事態」に関して、これまで法整備の議論は多々あった。04年5月に自民、民主、公明の3党が「緊急事態基本法」の骨子を決め、成立を図る覚書を交わしている。


 国民の権利を制限


 最近では12年の自民党憲法改正草案に、98条と99条を新設し緊急事態条項を加えた。緊急事態または非常事態については、これまでも自民党から議論が起こされてきた。15年5月に衆院憲法審査会で「緊急事態」「環境権」などが議論された。透けて見えるのは、改憲発議の突破口の目論みだ。
 自民党改憲草案98条では国家の「緊急事態」とは「外部からの武力攻撃」「内乱等の社会秩序の混乱」「地震等の大規模災害」「その他の法律で定める緊急事態」とし、「必要があると認める」場合に総理大臣が緊急事態を宣言する。99条では、緊急事態が宣言された場合は、自治体の長への指示と財政処置、宣言後の国会の承認、宣言中の衆議院解散の制限だ。中でも「国民の生命、身体及び財産」に関する措置では「国その他公の機関の指示に従わなければならない」とし、国民の諸権利を制限する。

 日本は様々な緊急事態に対応する法律は、警察法71条、74条、災害対策基本法105条、106条がある。また原子力災害対策基本法第10条にも緊急事態への対応が記されている。外部からの攻撃には自衛隊法の防衛出動の76条、また治安出動では78条、81条がある。どれも完全ではないし、同意できないものもある。問題は安倍首相が緊急事態宣言で独裁的な権限を持つことができる法制を欲していることだ。
 福島原発の過酷事故の「緊急事態」を生み出したのは歴代自民党政権だ。原発推進を国策とし、安全対策の手抜きをしてきた。福島原発が収束しないまま、今度は川内原発の危険性に目をつむり、真っ当な避難対策もなく再稼働を九州電力に丸投げした。
 日中間で「棚上げ」とした尖閣諸島問題を執拗に煽り、日韓、日朝の戦後処理問題や歴史認識で緊張関係を作り出しているのは安倍政権ではないのか。安倍政権自身が「緊急事態」を生み出す政策を加速しているのだ。


 沖縄の事態を見よ


 様々な緊急事態への対応は、既存の法律の整備や、震災、防災に強い街づくり、憲法9条による平和外交努力を国政の柱にすることだ。緊急事態下の国や防衛省、警察の姿は、沖縄・辺野古での住民弾圧や自治権否定、戦争法制定過程での国会軽視などをみれば一目瞭然だ。安倍政権に危険な緊急事態法の制定をさせてはならない。


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