新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 道しるべ
  4. 2015.12.08
2015.12.08
放送への政府介入
表現の自由否定につながる
 

 放送法4条の「番組編集準則」は、「放送局自らの倫理規範」とする放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委と、放送局が順守すべき「法規範」とする政府・自民党が鋭く対立している。憲法21条(表現の自由)の問題でもある。


 NHKの報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑を巡り、BPOの放送倫理検証委員会(委員長=川端和治弁護士)は11月6日、意見書を公表した。
 意見書は、NHKに「重大な放送倫理違反」とする一方、高市早苗総務相が検証中の4月にNHKを厳重注意し、自民党の情報通信戦略調査会が同じ4月にNHK幹部からヒアリングしたことを「圧力」と厳しく批判する。検証委が政府・与党に強く反発し、批判する背景には、政権によるメディア支配、とりわけテレビに対する規制強化の姿勢がある。


 放送法を巡って


 安倍晋三首相は11月10日の衆院予算委で、「単なる倫理規定ではなく法規であり、法規に違反しているから、担当官庁が法にのっとって対応するのは当然」と、高市総務相の行政指導を正当化。自民党調査会によるヒアリングも「NHK予算を承認する責任がある国会議員が事実を曲げているかどうか議論するのは至極当然」と答弁した。
 1950年制定の放送法は、3条で番組編集の自由を保障する一方、4条は放送番組の編集に当って、@公安や善良な風俗を害しない、A政治的に公平、B報道は事実を曲げない、C意見が対立する問題はできるだけ多くの角度から論点を明らかにするという4項目の「番組編集準則」を定める。
 安倍首相は、「準則」を法規と言い、行政指導やヒアリングを正当化した。BPOの検証委意見書は「準則」を放送局が自らを律する「倫理規範」とし、それを根拠とした行政指導や自民党のヒアリングを「圧力」と批判している。


 規制強化の流れ


 政府は、放送法制定からしばらくの間は準則を放送局の規範とする姿勢だった。72年、当時の広瀬正雄郵政相は「郵政省が行政指導する考えは毛頭ない」と国会で答弁している。
 だが、テレビが国民意識に与える影響力が強くなっていくとともに規制強化に転じる。93年にはテレビ朝日の椿貞良報道局長による「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしよう」とするいわゆる「椿発言」問題もあり、政府の介入は強まっていく。2005年には、麻生太郎総務相(当時)が国会答弁で行政指導を肯定し、その後、行政指導が相次ぐ。
 放送局が倫理規範を守る努力をするのは当然であり、過った場合はBPOが検証し、正していくのが民主主義社会のあるべき姿だ。行政指導は「表現の自由の萎縮効果につながる」(川端委員長)のであり、政府・自民党の放送内容への介入は、民主主義破壊・憲法の否定だ。


 ↑上にもどる
一覧へ
トップへ