先の通常国会で盗聴法大改悪、冤罪の温床となる司法取引や部分可視化の導入など刑事訴訟法関連法が成立した直後、5月31日付本欄は「共謀罪法案の提出を許すな」と訴えた。政府は「テロ等準備罪」と名称を変えた法案をまとめた。
本欄で「刑事司法改悪関連法が5月24日、衆院の再可決を経て成立した。捜査機関が次に狙うのは『共謀罪』導入だ」と警鐘を鳴らしたが、指摘は残念ながら的中したようだ。
現代の治安維持法
『朝日新聞』は、8月26日付朝刊1面トップで「共謀罪 要件変え新設案 テロ等準備罪 国会に提出検討」とスクープし、『東京新聞』などはその日の夕刊から「反対」を基調に論陣を張った。
『東京』は「参院公約に掲げず 勝利で一転 秘密保護法同じ手法」と指摘するが、第二次安倍政権から強行してきた「マイナンバー法」「特定秘密保護法」「安保関連法(戦争法)」「刑事訴訟法大改悪」といった流れから「共謀罪創設法案」は予測できたし、戦争する国づくりを策す権力にすれば、一連のマスコミ対策を含め、「当然の策」と言えるだろう。
つまり、自衛隊が海外に出て米軍と一緒に戦争をするための法整備を行う一方で、戦争に反対する組織や個人を監視・取り締まるための法体系を必要とするからだ。そうした意味から、共謀罪は「現代の治安維持法」と呼ばれるのである。
そして、秘密保護法には周到に「共謀罪」が埋め込まれ、「共謀」を立件するための盗聴が質的にも量的にも拡大された。さらに「室内盗聴」などへと進むだろう。街中の監視カメラは増え続けて生体認証へと進むだろうし、GPS捜査は既に行われ、「違法・合法」の正反対の判決が出ている。
「共謀罪法」創設の意図は、「監視社会・権力が国民を監視する国づくり」の文脈の中に位置づけることが肝要であり、安倍内閣が提出を目論む法案が、「テロ対策・2020年東京オリンピック成功」に名を借りた国民弾圧・民主主義扼殺法であることを指摘しなくてはらない。
人権を著しく侵害
過去3度国会提出され、廃案となった共謀罪法案は、犯罪の結果が発生するどころか、その準備行為すらない段階で犯罪を行うことを合意しただけで処罰することを目的とするもの。そのため、処罰対象が極めて曖味かつ不明確であり、治安維持法同様、解釈は権力の意のままとなる危険性がある。
このように、過去に国会提出された法案は、「共謀」について犯罪の内容や具体性の程度等は限定していない。具体的な行為があって初めて犯罪が成立し、どのような行為が犯罪になるかを明確に定めなければならないとする罪刑法定主義等の大原則に反する。
共謀罪は、近代刑法の基本原則に反し、基本的人権を著しく侵害する危険な制度だ。国会提出させてはならない。
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